最新記事

米軍事

米核戦略にICBMは必要? 過去の失敗事例から専門家は疑問の声

2017年12月5日(火)18時13分


瀬戸際からの生還

米国における核ミサイルの歴史は、1950年代にさかのぼる。ロケット製造技術を持たなかった米国は、第2次世界大戦後のドイツで、英国に向けてドイツが発射した「V2ロケット」建造に従事した科学者たちを探し回った。

秘密計画の下で、後に「米国ロケットの父」と呼ばれるベルナー・フォン・ブラウンなどの科学者をドイツから連れ出し、戦争犯罪の訴追から逃れることと引き換えに、米国に手を貸すよう迫った。

1947年には、米国と当時のソビエト連邦が冷戦に突入。かつてナチスのロケット設計を担当していた技術者は、ソ連国民の頭上に核弾頭を降らせるための米長距離ミサイル製造を手助けすることになった。

ゆっくりと計画は始動したが、状況が変わったのは1957年10月4日のことだ。ソ連が、小型衛星「スプートニク」を地球周回軌道に打ち上げ、宇宙開発で米国を凌駕した。米国本土に到達する能力を持つICBMによって衛星が打ち上げられた事実を重視した米国は、ミサイル開発を急ぎ、1959年11月には独自のICBM発射に至った。

爆撃機と比較したICBMの優位性は、30分で目標に到達できるという点だ。欧州内の基地を離陸した爆撃機でも、目標上空に到着するには数時間を要する。

1966年には、発射命令から実際の発射までに必要な時間が、5分に短縮された。これは燃料の変更によるものだ。

それまでは、ICBM発射直前に長時間のプロセスを経て注入される液体燃料が使われていた。だが、固体燃料が発明されたことで問題は解決された。固体燃料はミサイルを製造する際に搭載され、その後数十年にわたって利用可能な状態を保つことができる。

ICBMを懸念する軍事専門家が挙げる理由の1つは、破滅に至りかねない複数回の失敗を、米ロ双方が過去に犯している点だ。

例えば1985年には、200基のICBMをソ連が米国に向けて発射したことを示す核警告が、米戦略軍のコンピューター上に出現。幸いなことに、担当将校がコンピューターに不具合があり、ミサイルは発射されていないことを察知した、とペリー元国防長官は著書「My Journey at the Nuclear Brink(原題)」のなかで回想している。

同じ誤作動が2週間後にも繰り返されたあげく、ようやく問題が回路基板の欠陥にあることが判明したという。

1995年には、当時のロシア大統領ボリス・エリツィン氏が核ミサイルの発射ボタンに手をかけた。米国製とみられるミサイルがノルウェーから発射されたことを探知したからだ。だが、ロシア当局者は、それが核ミサイルではないとギリギリで判断した。

後に、打ち上げられたのが科学研究用の無害なロケットだったことが分かった。ノルウェーは事前に打ち上げの通告を行っていたが、その情報はロシアのレーダー技術者に伝わっていなかった。

(翻訳:エァクレーレン)

Scot J. Paltrow

[ワシントン 22日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

MAGAZINE

特集:沖縄ラプソディ

2019-2・26号(2/19発売)

報道が過熱するほど見えなくなる沖縄のリアル 迫る県民投票を前にこの島を生きる人々の息遣いを聞く

人気ランキング

  • 1

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練された方法を持っていた

  • 2

    思春期に大麻を摂取してなければうつ病が防げたかも 米国で40万件

  • 3

    少女の乳房を焼き潰す慣習「胸アイロン」──カメルーン出身の被害者語る

  • 4

    アマゾン、2年連続税金ゼロのからくり

  • 5

    家畜のブタが人食いブタに豹変──ロシア

  • 6

    数百万人の「中年フリーター」が生活保護制度を破綻…

  • 7

    【動画】子犬の「返品」を断られて激高し、殺してし…

  • 8

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の…

  • 9

    韓国経済の先行きに不透明感が高まっている3つの理由

  • 10

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 1

    『ボヘミアン・ラプソディ』を陰で支えた、クイーンの妻たち

  • 2

    【動画】子犬の「返品」を断られて激高し、殺してしまった女性にネットが炎上

  • 3

    13.48秒――世界最速の7歳児か 「ネクスト・ボルト」驚異の運動神経をNFL選手も絶賛

  • 4

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 5

    アマゾン、2年連続税金ゼロのからくり

  • 6

    数百万人の「中年フリーター」が生活保護制度を破綻…

  • 7

    ホッキョクグマ50頭が村を襲撃、非常事態を発令

  • 8

    家畜のブタが人食いブタに豹変──ロシア

  • 9

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練さ…

  • 10

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 1

    13.48秒――世界最速の7歳児か 「ネクスト・ボルト」驚異の運動神経をNFL選手も絶賛

  • 2

    ホッキョクグマ50頭が村を襲撃、非常事態を発令

  • 3

    【動画】子犬の「返品」を断られて激高し、殺してしまった女性にネットが炎上

  • 4

    インドネシアの老呪術師が少女を15年間監禁 性的虐…

  • 5

    小説『ロリータ』のモデルとなった、実在した少女の…

  • 6

    『ボヘミアン・ラプソディ』を陰で支えた、クイーン…

  • 7

    エロチックなR&Bの女神が降臨 ドーン・リチャードの…

  • 8

    口に入れたおしゃぶりをテープで固定された赤ちゃん

  • 9

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 10

    恋人たちのハグ厳禁! インドネシア・アチェ州、公…

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
「ニューズウィーク日本版」編集記者を募集
デジタル/プリントメディア広告営業部員を募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月