最新記事

ポピュリズム

イタリア政界、来春の総選挙にらみ主要政党がポピュリズム政策乱発

2017年11月16日(木)09時16分

11月14日、イタリアで来年5月までに実施される総選挙をにらみ、主要政党がこぞってポピュリズム(大衆迎合主義)政策を打ち出して支持獲得を競っている。写真は3日、パレルモの集会で演説する「五つ星運動」創設者のベッペ・グリッロ氏(2017年 ロイター/Guglielmo Mangiapane)

イタリアで来年5月までに実施される総選挙をにらみ、主要政党がこぞってポピュリズム(大衆迎合主義)政策を打ち出して支持獲得を競っている。

ポピュリズムと言えば、大抵の人は反体制派の「五つ星運動」の専売特許とみなす。しかし各政党が現在掲げる経済政策を見渡すと、財政赤字拡大による500億ユーロの大減税から、かつての通貨リラ復活案まで出そろい、どの勢力が最もポピュリズム色が強いかを判断するのは非常に難しいほどだ。

イタリアは2011年のユーロ圏債務危機の震源地で、今も債務総額はギリシャに次いでユーロ圏で2番目に大きい。それでもあらゆる政治家が債務削減ではなく減税や歳出拡大を唱えるありさまだけに、特に選挙後の政権がこうした政策を実行するようなら、ユーロ圏の新たな不安定要素になりかねないだろう。

最大500億ユーロの減税と財政均衡方針の見直しを約束しているのは、レンツィ前首相が率いる与党・民主党だ。レンツィ氏は財政赤字の対国内総生産(GDP)目標を今年の2.1%から3%に引き上げて固定する意向で、その実現に向けて欧州連合(EU)に対して強硬に談判すると表明している。

中道右派のフォルツァ・イタリアを率いるベルルスコーニ元首相は、国内で「新リラ」を発行しながら対外取引ではユーロを使用する並行通貨制度を提案した。これが消費や経済成長を押し上げるという。

逆に市場やEUが好む財政再建のような経済的に正統な政策には、どの主要政党も見向きもしていない。

イタリアでポピュリズム政策の人気が高いのは、EUが課した財政立て直し措置が2008─13年の深刻な景気後退の主な原因とみされているためだ。欧州議会が委託した調査では、EU加盟が国益になっていると回答したイタリア国民の割合はわずか39%と、28カ国中最低だった。

つまり欧州の政治・経済の主流派が責任ある政策と考える政策は、イタリアでは票を失うだけとなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米朝首脳会談、来年3月以降行われる可能性 韓国情報

ワールド

米国民の約半数、巨額の貿易赤字を「緊急事態」と認識

ワールド

韓国裁判所、旧統一教会・韓被告の一時釈放認める 健

ビジネス

テスラの中国製EV販売、10月は前年比-9.9% 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中