最新記事

中東

サウジ、王子や閣僚ら拘束 汚職対策通じムハンマド皇太子が権限強化

2017年11月6日(月)09時10分

11月5日、サウジアラビアのサルマン国王の子息ムハンマド皇太子が率いる汚職対策委員会は、同国の富豪で著名投資家アルワリード・ビン・タラール王子(写真)ら11人の王子や現職閣僚4人のほか、元閣僚ら数十人を拘束した。5月撮影(2017年 ロイター/Hamad I Mohammed)

サウジアラビアのサルマン国王の子息ムハンマド皇太子が率いる汚職対策委員会は、同国の富豪で著名投資家アルワリード・ビン・タラール王子ら11人の王子や現職閣僚4人のほか、元閣僚ら数十人を拘束した。3人の政府高官が5日、ロイターに明らかにした。

アルワリード王子は投資会社キングダム・ホールディング<4280.SE>を所有し、米金融大手シティグループや短文投稿サイトの米ツイッターに出資している。

汚職対策委は国家警備相を務めるムトイブ王子も拘束。同氏は職を解任された。

汚職対策委はサルマン国王が国王令により設置を命じたばかりで、容疑者に対する捜査や逮捕状の発行、渡航制限、資産の差し押さえなど広範な権限を与えられている。

国王令には「汚職を根絶し、犯罪者に責任を取らせない限り、自国は存続できない」と記されている。また、今回の拘束について、「不当に富を得るために公益よりも自身の利益を優先させ、権力を悪用した」ことが理由だと説明した。

アナリストらは、ムハンマド皇太子(32)が権力基盤を強化するため、国内の実力者を封じ込める狙いがあると分析している。

ムハンマド皇太子はわずか3年ほど前まではサウジ国内でほとんど無名の存在だったが、短期間で権力の座に駆け上がった。

サウジアラビアの主要株価指数<.TASI>は王子や閣僚ら拘束のニュースを受けて一時下落したが、すぐに上昇に転じ、前日より値を上げて引けた。長期的に改革が促進されるとの一部の期待を反映した。

拘束された有力者にはファキーフ経済計画相や国営石油会社サウジアラムコの取締役であるイブラヒム・アッサーフ元財務相、元リヤド州知事らが含まれる。また、建設大手ビンラディン・グループのバクル・ビンラディン会長やテレビ局MBCの所有者であるアルワリード・イブラヒム氏も拘束された。

情報筋などによると、有力者の少なくとも一部はリヤドの高級ホテル「リッツ・カールトン」で拘束されているという。

[リヤド 5日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も

ビジネス

EU、炭素国境調整措置を強化へ 草案を正式発表

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ワールド

戦略的互恵関係を推進、国会発言は粘り強く説明=日中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中