最新記事

中国共産党

習近平新指導部の上海視察は何を意味するのか?

2017年11月2日(木)15時45分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

10月25日に誕生した習近平ら新チャイナ・セブン Jason Lee-REUTERS

10月31日、習近平ら新チャイナ・セブンは上海にある第一回党大会開催跡地を視察した。これに関して「権威高める狙い」「江沢民派閥排除を強調」などの報道があり、又しても中国の真相を観る視座を歪めている。

NHKも、産経新聞も

NHKは11月1日のニュースで「習主席の権威高める狙いか  中国共産党ゆかりの地を訪問」と題して、「中国の国営テレビは、習近平国家主席が新しく選ばれた最高指導部のメンバーとともに共産党への忠誠を誓う姿や、大勢の人に歓迎される姿を放送し、習主席の権威を一層高める狙いがあるものと見られます」と報道。

産経新聞は2017.10.31 17:28のネット・ニュースで「習近平氏ら中国共産党指導部7人が上海入り 第1回党大会記念館を訪問、江沢民派閥"排除"を強調か」というタイトルで、習近平が新チャイナ・セブンを従えて上海を視察し、第一回党大会の跡地を訪問したことを報道している。

両方とも「習近平が新チャイナ・セブンを従えて第一回党大会が開催された上海にある跡地を視察した事実」を報道していることに関しては全く間違いがない。しかしNHKは、それを「習近平の権威を高めることが狙いだ」と解釈し、産経新聞は「江沢民派閥"排除"を強調するため」と解釈している、その解釈が適切ではないのだ。

中国共産党は1921年7月23日から31日まで、上海のフランス租界の貝勒路樹(ベラルーシ)徳里3号(のちに望志路106号、現在の興業路76号)にある建物の中で、こっそりと第一回党大会を開催した。参加者はわずか12人(後に1人増加)。

こっそり開催したのは、国民党の政権下にあったので、共産党の活動は厳重に取り締まられていたため、隠れるようにして開催したわけだ。開催中、案の定、国民党軍に場所がばれた情報を事前にキャッチして、慌てて逃げ出し船の上で残りの議事を討議した。

産経新聞には、「毛沢東らが党設立を決めた」とあるが、「ら」という一文字がありはするものの、党設立は毛沢東が主導したものではない。中国共産党を主導したのは陳独秀で、このとき毛沢東はまだ下っ端で、長沙の代表に過ぎない。それも開催前に北京から離れていなければ代表の一人にさえなれなかった。毛沢東が共産党の権力を握り始めるのは延安に着いてからで、それから15年も以降のことである。この経緯は拙著『毛沢東日本軍と共謀した男』p.49前後で詳述した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UAE、イエメンから部隊撤収へ 分離派巡りサウジと

ビジネス

養命酒、非公開化巡る米KKRへの優先交渉権失効 筆

ビジネス

アングル:米株市場は「個人投資家の黄金時代」に、資

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック小幅続落、メタが高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中