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習近平思想を党規約に――新チャイナ・セブン予測(5)

2017年10月17日(火)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

何が変わるのか

七中全会やこれまでの公報をよくよく読むと、三つの「もし~がなければ」と四つの「きっと~だろう」という構成になっていることが分かる。

まず、三つの「もし~がなければ」は(カッコ内は筆者注)

●もし党中央の権威と集中統一指導がなければ(=もし集団指導体制でなければ)

●もし厳しい政治紀律と政治規定がなければ(=もし反腐敗運動を続けなければ)

●もし風紀正しい清廉潔白な政治姿勢がなければ(=もし汚職や賄賂で乱れていれば)

で、

四つの「きっと~だろう」は

■きっと(中国共産党は)、党の創造力と凝集力と戦闘力を失うだろう。

■きっと執政の基礎と執政能力を失うだろう。

■きっと激しく民心から離脱してしまうだろう。

■きっと人民を改革開放に向けて導いていく力を失い、社会主義建設の歴史的重責を果たすことが出来なくなるだろう。

と、このような構成になっている。

これはすなわち、中国共産党による一党支配体制が臨界点に達しており、このまま放置しておけば、「紅い中国」は腐敗によって滅びるであろうことを、習近平が自覚しているということを表す。

これは決して権力闘争などという、生易しいものではない。

これは「権力闘争」ではない!

日本では(NHKまでもが)、「習一強」は「権力闘争であり」「これは権力の罠だ」とまで言い切って、実に間違った分析を堂々と続けているが、日本の対中政策を見誤らせる。猛省を求めたい。

中国は今、社会主義国家をこのまま維持できるか否かの瀬戸際に来ている。

決定権を持っているのは、あくまでもチャイナ・セブン。

この中で多数決議決をして、賛成票が得られなかったときに、初めて権力闘争が生まれる。習近平現政権は、「7:0」で賛成票を得ながら党運営を進めている。だからこそ、反腐敗運動ができるのである。

胡錦濤時代のチャイナ・ナインの時には、胡錦濤に賛成するのは本人も入れて3人で、後の6人はみな(習近平を含めて)江沢民派の刺客だった。胡錦濤の提案は、つねに「3:6」で否決されてきた。だから反腐敗運動を断行することが出来ず、腐敗が益々蔓延して、手がつけられなくなっているのだ。なにしろ習近平政権になってから、5年間で大小200万人の汚職幹部が処分されている。どれだけ腐敗の根が深いか想像に難くない。

だからこそ、一帯一路で新たな汚職を生んだ孫政才・元重慶書記の罪は重いのであって、これも権力闘争ではない。

一つのコラムで全てを書くのは困難なので、今回は「習近平思想」を党規約に書き込む可能性と必然性に関する考察にとどめた。他に関してはこれまで本コラムで連載してきた「新チャイナ・セブン」シリーズをお目通し頂きたい。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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