最新記事

中国共産党

毛沢東の孫、党大会代表落選――毛沢東思想から習近平思想への転換

2017年9月11日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

実は毛新宇は2008年から全国政治協商会議が開催されるたびに、「毛沢東の孫」という貴重な存在からマスコミが重宝して取材合戦を繰り広げていた。その取材に対して毛新宇は彼の素朴なパーソナリティを発揮し、ネット市民(ネットユーザー)の笑い者となっていく。

たとえば、こんな会話がある。

毛新宇:実は母は私にアメリカ留学を進めていた。なぜならアメリカには非常に多くの毛沢東思想を研究する人がいて、アメリカで毛沢東はジョージ・ワシントンよりも地位が上だって聞いたんだけど、それって、ほんと?

記者:いやー、違うと思いますよ。

毛新宇:ああ、やっぱりそうか...。周りが私を留学させたくないのは、きっと私が海外に行った途端に思想的な変化が起き、中国に戻ってきたくないと思うようになるかもしれないからなんだね。

こんな素朴な、「正直なこと」をまじめに言ったりするものだから、たちまち受けてしまった。ネット市民は拍手喝采で「毛沢東の孫」のインタビューを見ようとする。そのうち、「彼の言葉は、頭脳を通さずに発せられる」と面白がるようになり、娯楽の対象となってしまったのである。

習近平は共産党一党支配体制が危うくなっているため、習近平政権発足以来、毛沢東の威信を借りて人民の心をつなごうとしていた。しかし「毛沢東の孫」がこんなでは、威信も何もあったものではない。習近平自身が笑い者になる可能性がある。

そこで習近平は「去毛化(毛沢東の影響を取り去る政策)」という方向に動き始めた。

毛沢東思想から習近平思想へ

まず表面化したのは、昨年6月、毛沢東記念堂を天安門広場から毛沢東生誕の地である湖南省に移そうという建議が中共中央政治局会議で出されたことである。

その流れの中で、「習近平の核心化」が始まり、至るところで「習近平思想」という言葉を使わせるようになった。

日本のメディアは、これを「権力闘争」だと位置付けているが、それは誤読だろう。

毛沢東思想を残しておくのか、それとも「去毛化」によって習近平思想に切り替えていくのかは、中国の運命の分岐点でもある。

毛沢東思想に基づけば「金儲けはしてはならない」ことになり、改革開放を否定することにつながる。だから習近平は「改革開放を深化させること」をテーマとする「領導小組(指導グループ)」を作って習近平自らが組長となった。これを李克強外しだと日本のメディアは囃し立てた。共青団派と太子党(紅二代)との権力闘争と位置付けるものまで現れて、唖然としたものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領、国防向け最先端航空技術への投資表明

ビジネス

米GM、韓国部門に6億ドル投資へ 工場近代化など

ワールド

米国は「自分自身と交渉している」、イラン軍報道官が

ビジネス

日経平均は大幅続伸、一時5万4000円回復 中東懸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下位になった国はどこ?
  • 4
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 7
    スペイン王室、王妃と王女の装いに見る「母から娘」…
  • 8
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 9
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中