最新記事

中国共産党

毛沢東の孫、党大会代表落選――毛沢東思想から習近平思想への転換

2017年9月11日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

問題は、毛沢東を否定することは中国共産党を否定することにつながることである。

しかし毛沢東が「本当は何をしたのか」に関しては、このネットの時代。筆者が2015年11月に著した『毛沢東 日本軍と共謀した男』は中国でも知られるようになり、ニューヨークで中国語版が出たり、昨年9月にはワシントンのナショナル・プレス・センターで講演したりなどしたものだから、VOAなど数多くのメディアが習近平に見せるために筆者のドキュメンタリー番組を制作したりもした。それも影響していると、関係編集者たちは言っている。もちろん他の多くの海外にいる中国人研究者たちも同様の内容を発信していることは、言うまでもない。その言動は中国大陸のネットでも壁越え(万里の防火壁を越える)ソフトを使えば観ることができる。

いずれにせよ、毛沢東思想と毛沢東の影響そのものを否定するのか否かは、習近平政権にとっては一党支配体制の命運を決める重要な分岐点となっている。

8月1日には毛新宇落としが決まっていた

そのような中、今年8月1日の中国人民解放軍建軍節を祝賀する宴席で、習近平はワイングラスを持ちながらパーティ会場を回ったのだが、毛新宇の近くに行ったとき、習近平はクルリと背を向けて他の女性に杯を向け、毛新宇を背中に残したまま通り過ぎていってしまった。後ろに並ぶ李克強も同様に毛新宇に背中を向けたまま去っていった。

この時の動画がネットにアップされている。最初の一コマにある。その後は「毛新宇のお笑いインタビューが延々と続く。

9月9日は毛沢東逝去41周年記念だったが、いかなる国家行事もなかったことに注目したい。

第19回党大会で、党規約に「習近平思想」が書き込まれるか否か――。

そこにはこのような背景があるのであって、権力闘争と見ていたら、中国を読み取ることはできない。強いて権力闘争という言葉を使うなら、闘争している相手は「毛沢東」ということになろうか。習近平はひたすら葛藤していることだろう。

これこそは一党支配体制の根本的矛盾と限界を示すものと解釈しなければならない。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル

ワールド

香港警察、手配中の民主活動家の家族を逮捕

ビジネス

香港GDP、第1四半期は前年比+3.1% 米関税が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中