最新記事

中国共産党

毛沢東の孫、党大会代表落選――毛沢東思想から習近平思想への転換

2017年9月11日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

張邵華は北京大学で学んでいた才媛。一つ上の学年に除文伯という男性がいて、二人は愛し合うようになっていた。しかし母親に無理やりに引き裂かれて毛岸青と結婚したのだが、毛岸青との間には子供ができない。そこで周恩来が人工授精を医者に頼んで生まれたのが毛新宇であるという説と、いや、毛新宇は除文伯の子供だという説など、定かではない。「除文伯の子」を支持する論証は非常に多いのだが、二人を比べた写真が載っているページがあるので、ご参考までにご紹介する。

毛沢東が自分の孫に一度も会わなかった理由はいくつもある。

最大の理由は、このとき毛沢東のそばにいた妻(3番目の妻)は、文革で暴れまくったあの江青だったということだ。江青は強欲で傲慢。自分には娘がいる。毛沢東の跡を継ぐことはできないかもしれないが、自分自身か自分の娘たちが権力を握るべきだと考えていた。

そのため江青は毛沢東の最初の妻の息子である毛岸青を徹底的に嫌い、毛岸青の妻となった張邵華を文革(1966年~76年)で批判の対象としたほどだ。

そんなわけで毛新宇を中南海に招くことはなかったという。

ではなぜ第18回党大会の代表になったのか

胡錦濤政権時代の2007年に毛岸青が他界した。妻の張邵華も重病となったので、長老の毛沢東派による進言などで胡錦濤(前国家主席)は、2008年に毛新宇を、全国政治協商会議の委員に推薦し当選した。

もともと毛新宇自身は1992年に中国人民大学を卒業した後、1995年に中共中央党校の修士学位を取得し、その後中国軍事科学院で博士の学位を取得している(テーマは毛沢東思想)。2005年に、わずか3,500文字の論文が全国最優秀博士論文として表彰されたというから、その博士学位たるや推して知るべし。

2008年に母親の張邵華も他界すると、長老の毛沢東派に推され、胡錦濤は2008年7月に毛新宇を軍事科学院戦略部副部長に任命し、2010年7月には少将の軍階を授与した(写真は2011年に胡錦濤と握手する毛新宇)。

こうして、毛新宇は胡錦濤政権最後の党大会である第18回党大会(2012年11月)における軍関係者の代表の一人に推薦され当選した次第である。軍事科学院副院長になっていた。

なぜ第19回党大会の代表から降ろされたのか

今般、第19回党大会の全国代表者名簿が公開され、その軍関係者の中に毛新宇の名前がないことがわかった。理由として、「体型が軍のイメージを傷付ける」という、もっともらしい情報が流れているが、必ずしもそのように単純なものではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、不法滞在者の送還拡大に言及 「全リソー

ビジネス

焦点:日鉄、巨額投資早期に回収か トランプ米政権の

ビジネス

香港取引所、東南アジア・中東企業の誘致目指す=CE

ワールド

米ミネソタ州議員射殺事件、容疑者なお逃走中 標的リ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中