最新記事

スペイン

カタルーニャ独立の住民投票、その先は?

2017年9月8日(金)22時37分
ジョシュ・ロウ

バルセロナの独立支持集会でカタルーニャ独立旗を旗を振る人々(2017年6月11日) Albert Gea-REUTERS

<バルセロナを州都にもつスペインのカタルーニャ自治州が10月1日に独立の是非を問う住民投票を実施することを決めたが、スペイン政府は投票も独立も阻止する考え>

スペイン北東部カタルーニャ自治州の州議会は9月6日、スペインからの独立の是非を問う住民投票を実施する法案を賛成多数で可決した。10月1日に実施する予定だ。

カタルーニャ州の独立に向けた動きは、長年ヨーロッパにくすぶる最も厄介な火種の1つだ。投票が行われる前に知っておくべきことをまとめた。

■カタルーニャはなぜ独立したいのか

カタルーニャは最初からスペインの一部だったわけではない。15世紀後半までは、アラゴンと呼ばれる王国の一部だった。アラゴンがスペインに統合されてからも、カタルーニャは広範な自治権を認められ、独自の議会を持っていたその後1714年にスペイン王フィリペ5世に自治権を廃止されたが、現在は独自の議会や政府、教育や警察などの権限も認められている。

税金を納める一方

スペイン第2の都市バルセロナを州都にもつカタルーニャは、独自の文化を持つ。言語も、スペイン語と並びカタルーニャ語が広く使われている。スペインの国民的娯楽とみなされる闘牛を国内で初めて禁止するなど、スペインの伝統とも距離を置く。

カタルーニャは昔から経済活動が活発で豊かな地域で、他の自治体より相対的に多くの税金をスペイン政府に納めている。税金を多く払っている割に公共投資が少ないことも、独立派の不満の1つだ。逆にスペイン政府からすれば、金の卵のカタルーニャは決して手放したくない。

■住民投票の進め方は

カタルーニャ州は2014年にも住民投票を実施した。独立賛成派が圧勝したが、投票率が非常に低かったため憲法裁が違憲判決を出した。

スペイン政府は2014年と同様、カタルーニャ州による住民投票を認めない立場だ。9月6日に州議会が投票実施の州法を成立させると、「憲法と民主主義に対する暴挙だ」と激しく批判した。

そのため住民投票の実施可能性には疑問符がつく。リスクコンサルタント会社、テネオ・インテリジェンスの分析によれば、スペイン政府が州政府関係者を訴追したり、警察に投票所の閉鎖を命じたりして住民投票を阻止する確率は70%だ。

住民投票が実施された場合、独立派は2014年の投票率37%を上回る投票率を確保し、独立賛成を勝ち取りたい。そうすれば投票の合法性を全面的に主張できる。

■住民投票後はどうなる

もし独立派が勝てば、カタルーニャ州政府は独立を宣言すると言っている。まずやるべきは独立のための法律を成立させることだが、憲法裁はそれらを片端から無効にするだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

7─9月の石油需要「非常に強い」=OPEC事務局長

ビジネス

中国6月鉱工業生産、+6.8%で予想上回る 小売売

ワールド

来日する米財務長官、万博出席以外の滞在日程は調整中

ビジネス

米GM、テネシー州工場で低価格のLFP電池生産へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中