最新記事

メディア

中国官制メディアの無断転載に抗議したら850円もらえました

2017年9月28日(木)11時46分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

環球時報編集部「ハハハ、いつも利用料は払ってないのさ」

かくして私は国境を越えた記事翻訳利用料取り立てというタスクに挑むこととなった。どうすればいいのかよく分からないまま、とりあえず環球時報編集部に電話をかけると、あっさりつながった。ありがたや!

電話がつながったぐらいで喜ぶなと言われるかもしれないが、いやいやいや、ちょっと待ってほしい。中国企業の取材を相当数こなしている私だが、中小の中国企業だと、そもそもウェブサイトに電話番号が書いていない、書いていても電話番号がつながらない、つながったと思ったら無関係のお宅だった......というトラップはざらにある。電話がつながるだけでもありがたい話なのだ。

かくかくしかじか......おたくに無断転載されたんですが......と話すと、電話を受けた編集者は「ハハハ、うちの新聞はね。海外メディアの記事を翻訳して載せるのがメインの仕事。いつも許可をもらってないし、利用料も払ってないのさ」とあっけらかんと答えた。

そう、環球時報はアグレッシブな社説&コラムばかりが知られているが、基本は海外情報紙。海外メディア記事の翻訳で紙面の大半が構成されているのである。一切利用料を支払わずに紙面を構成しているとは......一応知っていたが、こうもあっけらかんと話されると驚きである。なんかこう、もう少し恥じらいがあってもいいのではないのだろうか。

とはいえ、「ハハハ」とだけ聞いて引き下がっては沽券に関わる。食らいついてみると、対外伝播部のWさんという人を紹介された。改めて記事の無断転載について説明すると......。

「ニーハオ! 高口先生。編集部に問い合わせて、あなたの記事の転載を確認いたしました。原稿料をお支払いいたします。国家新聞出版広電総局の"文字作品報酬支払い弁法"に関する規定によると、転載原稿の原稿料は1000字単位で支払われます。1000字当たり100元、500字以上1000字未満は1000字として扱われます。あなたの転載記事は500字以下でしたので、お支払いできる原稿料は50元となります。支払いは人民元のみで別の通貨ではお支払いできません」

――とあっさり原稿料支払いの申し出が。といっても50元(約850円)だけ。環球時報にかけた電話代だけでも赤字間違いなし!の原稿料である。とほほ。

中国共産党としては転載はむしろありがたい

発行部数200万部、天下の環球時報である。もう少し原稿料ちょーだい、せめて国際電話代になるぐらいは下さいというのが私の要求であったが、「法律」がある以上はどうしようもない。そう、中国では記事の転載は基本OKであり、その場合の執筆者への支払い金額も政府によるガイドライン(1000文字100元)が定められている。

また、初出メディアへの報酬支払いの規定はない。支払い対象はあくまで執筆者である。今回のケースだと、環球時報がニューズウィーク日本版に支払いをする義理はないのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

エヌビディアが独禁法違反、中国当局が指摘 調査継続

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中