最新記事

メディア

中国官制メディアの無断転載に抗議したら850円もらえました

2017年9月28日(木)11時46分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

このとおり、環球時報からWeChatで50元(約850円)の原稿料が送金されてきた 提供:筆者

<当サイトに書いた記事が、発行部数200万部、天下の環球時報に無断で翻訳・転載された。編集部の"指令"により、抗議の連絡をしてみた顛末>

環球時報という中国の新聞をご存じだろうか?

人民日報旗下の新聞としていわゆる「官制メディア」の一角を占める存在でありながら、社説やコラムでは"イケイケドンドン"な挑発的内容を載せることで知られている。

中国共産党の機関紙である人民日報は格調が高い。他国を直裁的に罵倒する、あるいは「ここは一発、武力制裁でもやっときますか」といった軽はずみな記事は載らない。その点、環球時報はフリーダムと言えばいいのだろうか、社説やコラムに関してはかなり好き放題に書いている。「ノーベル賞に対抗して孔子平和賞を作ろう!」という謎の運動も環球時報のコラムが初出だった(2010年、実際に同賞は創設されている)。

この新聞は日本の一部メディアにとってもありがたい存在で、「中国官制メディアがこんな過激な発言を!」と槍玉に挙げるのにちょうどいい存在だったりする。

私も某週刊誌のリサーチャーとしてお仕事をさせていただいたとき、「人民日報に日本をこき下ろすような発言は載ってませんかね? 載ってたら記事にしたいんですが」「人民日報はそんな直接的な表現は使いませんよ」「じゃ、環球時報でいいんで、そういう過激な記事を探してください」「えー」というやりとりをしたことをよく覚えている。日中メディアで互いに煽り合うときの大事なマッチポンプ・パートナーというわけだ。

さて、ここから本稿の主題となるのだが、私めはその環球時報からありがたく原稿料を頂戴したというお話である。

中国は「著作権!? なにそれ食えるの?」というお国柄

といっても、記事の執筆を依頼されたわけではない。ニューズウィーク日本語ウェブサイトに執筆した記事「『二次元経済』とは何か? 中国ビリビリマクロリンク取材記」(8月4日付)が環球時報に抄訳という形で掲載されたのだ。無断転載、盗用である。

takaguchi170928-2.jpg

Newsweek Japan

私がこの事実を知ったきっかけは、取材先のビリビリ動画広報からの連絡だった。「環球時報に掲載されたよ~ありがとう!」との喜びの声である。日本メディア向けの取材応対をしたつもりが、中国メディアにまで掲載されてラッキーという喜びであった。

私としても、「中国で名前が売れてよかった」ぐらいの気持ちだった。というのも中国は、とりわけ文字データに関しては「著作権!? なにそれ食えるの?」というお国柄である。

中国の大学に留学していた頃の話だが、ゼミでの師匠の言葉は衝撃的だった。「この問題については私の***という論文に書いています。適当に検索すると、海賊版PDFが落ちているので、気になる人はそれを読んでください」という言葉がそれだ。これが当たり前だとの認識を植え付けられていたので、無断転載や盗用に今さら目くじらを立てるという発想そのものがなかった。

だが、我らがニューズウィーク日本版ウェブ編集部の考えは違ったようだ。担当編集者Mさんから「無断転載許すまじ。利用料を取り立てよ。死して屍拾う者なし」とのステキな指令を頂いた(編注:実際には「無断転載は看過できません。すみませんが、環球時報への連絡をお願いしてもいいでしょうか」ぐらいのニュアンスです)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

高市首相、午後10時10分から記者会見 全閣僚を再

ワールド

ナイジェリア、中国Temuをデータ保護法違反の疑い

ビジネス

英CPI、1月は前年比+3.0% 昨年3月以来の低

ワールド

金価格、1週間ぶりの安値から反発 FOMC議事要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 4
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 10
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中