最新記事

イラン核合意

世界が抱えるもう1つの核危機

2017年9月21日(木)17時50分
コラム・リンチ

欧州寄りの米政府関係者や、イランの核合意順守状況の監視役であるIAEA(国際原子力機関)も、イランはきっちりと合意を順守していると言っているのに、報道によれば、トランプはどこからかイランは合意を順守していないと結論づけたという。

トランプは昨年の米大統領選挙の最中から、オバマ前政権下で結ばれた核合意を悪しざまに言ってきた。同合意はイランの弾道ミサイル開発を禁じておらず、ウラン濃縮活動などの制限にも最大25年の期限があって、それ以降核開発が再開されかねないことなどを問題視している。

国連総会での初演説でも、イランを「暴力、殺戮、混沌を主な輸出品とする困窮したならず者国家」と呼んだ。核合意のことは「アメリカがこれまで合意したなかで最も一方的で最悪の取引」と呼び、破棄する可能性を匂わせた。

イラン国民へ謝罪を

イランに対するトランプの強硬姿勢を支持しているのは、イスラエルとペルシャ湾岸の首長国家だ。核合意で経済制裁が解除されたイランは、数十億ドルに上る増収分をイラクやレバノン、パレスチナ、シリアなどの武装グループ支援に回し、地域での影響力を拡大しているというのだ。

ロウハニは、再交渉は「現実的ではない」と言った。何年にも及ぶ国家間の厳しい交渉の末、ようやく国連安保理の支持を得て成立した合意なのだ。

「今後期待するのは」と、ロウハニは言った。「トランプ氏からイラン国民に対する謝罪だ」

だがトランプは、また正反対のことをするかもしれない。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バーゼル銀行監督委、銀行の気候変動リスク開示義務付

ワールド

訂正-韓国大統領、日米首脳らと会談へ G7サミット

ワールド

トランプ氏、不法滞在者の送還拡大に言及 「全リソー

ビジネス

焦点:日鉄、巨額投資早期に回収か トランプ米政権の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中