最新記事

W杯

北朝鮮労働者がロシアW杯会場で「強制労働」? 事実なら大会開催権はく奪も

2017年8月4日(金)15時20分
ダミアン・シャルコフ

北朝鮮労働者の「強制労働」疑惑が浮上したロシアの建設現場(写真は建設が進むロシアの別のW杯会場) David Mdzinarishvili-REUTERS

<W杯ロシア大会のスタジアム建設現場などで、北朝鮮の労働者が「強制労働」させられているという疑惑が浮上。ロシア側は独立機関に調査を依頼する一方、疑惑を否定しているが>

2018年に開催されるワールドカップ・ロシア大会のスタジアム建設現場で、北朝鮮の労働者が「強制的」に働かされ、さらに不審な状況で死亡しているとして、対ロシア制裁に積極的なアメリカの上院議員8人が調査を要求している。ロシア側はこの疑惑を否定している。

疑惑について、ロシアの元スポーツ相でW杯ロシア大会組織委員会のビタリー・ムトコ会長は、大会準備に違法性がないことはFIFA(国際サッカー連盟)に証明できる、と語った。ロシア大会はロシア全国11の都市で来年開催されるため、現在12のスタジアムで全面改装や建設作業が進められている。

ロシアのイタルタス通信がこの問題について8月3日に取材したところ、ムトコは「FIFAは独立した監視団体に調査を依頼している」と話している。「法令違反はないのだから、この問題は終わりにするべきだ。(北朝鮮の強制労働者は)ロシア大会の関連施設では働いていない」

【参考記事】北朝鮮の「滅びのホテル」がいよいよオープン間近?

W杯開催に向けて準備が進むロシアで、北朝鮮労働者の使用問題は論争の的になってきた。ロシア政府の入国記録から、ロシアのメディアは2~3万人の北朝鮮出身者がロシアに居住していると推計している。

今年5月、モスクワの施設建設現場で働いていた2人の北朝鮮労働者が、滞在先で呼吸困難を起こして死亡した。この他、今年2月のノルウェーメディアの報道によると、サンクトペテルブルグのスタジアム建設現場で、少なくとも110人の北朝鮮労働者が劣悪な条件下で「強制的に」働かされていたという。

8月2日、対ロシア制裁に積極的な米上院外交委員会のロバート・メネンデス委員(民主党)ら8人が、共同文書をFIFAに送り、もしロシア政府が「北朝鮮労働者の強制労働」を受け入れていることが独立機関の調査で判明したら、大会開催権をはく奪するよう求めた。

【参考記事】北朝鮮2度目のICBM発射実験は、アメリカと日韓を分断するワナ

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

マクロン氏、プーチン氏のイスラエル・イラン危機仲介

ワールド

原油先物続伸し3%超上昇、イラン・イスラエルの攻撃

ビジネス

ECB、2%のインフレ目標は達成可能─ラガルド総裁

ワールド

トランプ氏、イラン・イスラエル和平を楽観視 プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中