最新記事

中国市場

アメリカ企業、貿易摩擦懸念相手の中国で稼ぐ現実

2017年8月16日(水)20時23分

米国と中国は貿易摩擦が激化しかねず、政治的な関係は雲行きが怪しい。だが米企業にとって、今年は中国市場が着実な収益源となっているのが現実だ。写真は、上海にあるスターバックスとマクドナルドの店舗。2014年7月撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

米国と中国は貿易摩擦が激化しかねず、政治的な関係は雲行きが怪しい。だが米企業にとって、今年は中国市場が着実な収益源となっているのが現実だ。

米主要企業の第2・四半期決算は、建設機械から半導体、コーヒーに至る幅広い業種で、中国事業の好調が全体の利益と売上高を押し上げる構図が見られた。

追い風になったのは、約7%と米国の数倍も高い中国の経済成長率と住宅ブーム、ドル安など。習近平国家主席が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に伴うインフラ整備計画も米企業の売上高増加につながった。

建設機器大手キャタピラーは、中国市場の好調がけん引する形で第2・四半期のアジア・太平洋地域の売上高が前年同期比25%増加。上半期の中国顧客向け掘削用大型機械の出荷は2倍以上に増えた。キャタピラーのブラッド・ハルバーソン最高財務責任者(CFO)は投資家向け説明会で「中国の需要は年内いっぱい強さを維持すると見込んでいる」と述べた。

半導体のスカイワーク・ソリューションズの四半期決算は、中国のスマホメーカーである華為技術(ファーウェイ)向けの需要などが支えとなり、20%の増収。ゴールドマン・サックスによると、スカイワークは中国の売上高比率が85%程度に達している。

通信用半導体大手クアルコムも先月、中国市場は引き続き同社にとってしっかりした成長が期待できるとの見通しを示した。クアルコムは売上高の3分2程度を中国市場が占める。

ルースホールド・グループの最高投資責任者(CIO)のジム・ポールソン氏は「この間の中国の成長率は米国に比べてとても高く、為替相場も米企業に有利な方向に振れた」と話す。

中国で事業を展開する米企業は、市場へのアクセスを十分に認められていないことや地元企業との不当な差別的待遇に不満を漏らす。それでも総じて中国事業に対する見通しは明るい。米中両国の関係にきしみが出てきている中でも、在上海米商工会議所が7月に公表したリポートによると、今年の売上高が増加すると予想した中国に拠点を置く米企業割合は82%で、1年前の76%を上回った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、東アジアの海域に多数の艦船集結 海上戦力を誇

ワールド

ロシアの凍結資産、EUが押収なら開戦事由に相当も=

ビジネス

日経平均は3日続伸、1000円超高 AI関連株高が

ビジネス

伊藤園、飲料品の一部を来年3月から値上げ お~いお
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中