最新記事

南米

混乱続くベネズエラ マドゥロ政権へクーデターの不安も

2017年8月9日(水)09時30分

8月7日、反米左翼マドゥロ政権への抗議行動が続くベネズエラは、武装グループが軍の基地を襲撃して武器を強奪する事件が発生し、クーデターの不安が頭をもたげ始めている。写真は6日、バレンシアでバリケードを築くデモ参加者 (2017年 ロイター/Andres Martinez Casares)

反米左翼マドゥロ政権への抗議行動が続くベネズエラは、武装グループが軍の基地を襲撃して武器を強奪する事件が発生し、クーデターの不安が頭をもたげ始めている。

大規模な抗議行動や国際的な批判にもかかわらず、新憲法制定のための制憲議会が先週発足。国民の間にはこれ以上は民主的な手段で政府に対抗するのは難しいとのムードが広がっている。

こうした雰囲気が後押しする形になったのか、6日には兵士や武装した市民によるグループがバレンシアの軍基地を襲い、武器を奪う事件が起きた。政府の発表によると2人が死亡し、当局が10人の行方を追っている。

このグループが事前に録画したビデオメッセージには軍服のようなそろいの服を着た十数人のメンバーが映っており、憲法による秩序の回復とマドゥロ大統領の退陣を要求した。

戦術行使をためらい、抗議行動を延期した野党指導者に対し、強硬派は裏切られたと感じ、不満を募らせている。

政治アナリストのルイス・ビセント・レオン氏によると、ベネズエラは武器の入手が容易で、政府の鎮圧行動によって活動家の過激勢力が地下に潜って軍隊化し、反乱軍となる恐れがある。「政府が急進化するにつれて、反政府勢力も拡大し、将来的に全面的な紛争に突入するかもしれない」と話す。

別のアナリストも、状況の悪化に歯止めが掛からなければ内戦に近い状態に陥る危険性があるとの見方を示した。

既に先月30日には制憲議会選の最中に爆発で警官7人が負傷する事件が起きている。

6日の軍基地襲撃を率いた元国家警備隊員は、軍指導者に反旗を翻して武器を取るよう同胞に呼びかけた。6月にヘリコプターで最高裁を襲撃した元警官は、逃走を続けながらも戦い続けると表明している。

道路封鎖に参加しているマリア・ロドリゲスさんは6日、「軍が蜂起するのを支持している。市民だけでは無理だ」と話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中