最新記事

コンピュータ

量子コンピュータ推進で文科省32億円 欧米より1ケタ少なく危機感

2017年8月31日(木)19時38分

8月31日、次世代コンピューターの開発競争が過熱している。米IBMなどが本命とされる量子コンピューターの開発競争でリードする一方、NTTなど日本勢は「組み合わせ最適化問題」の解決に特化したコンピューターで一足先の実用化を目指している。写真はキーボード、2013年2月撮影(2017年 ロイター/Kacper Pempel)

次世代コンピューターの開発競争が過熱している。米IBMなどが本命とされる量子コンピューターの開発競争でリードする一方、NTT<9432.T>など日本勢は「組み合わせ最適化問題」の解決に特化したコンピューターで一足先の実用化を目指している。

だが、将来の産業社会で主導権を握るには「本命」の開発は避けて通れない。危機感を持つ文部科学省は来年度予算の概算要求に光・量子技術の推進費として32億円を盛り込んだが、欧米に比べ1ケタ少なく、研究者の間からは予算の格差を危惧する声も聞かれる。

限界打破の決め手

「半導体の集積密度は、18カ月で2倍になる」というコンピューターの性能向上を支えてきたムーアの法則。だが、半導体の微細化は限界に近づき、最近ではその終えんもささやかれるようになってきた。

この状況を打破する決め手として注目されているのが、量子コンピューターだ。

従来のコンピューターでは、0か1のいずれかの値をとるが、量子コンピューターは0でもあり、1でもあるという量子力学の「重ね合わせ」という概念を利用するため、複数の計算を同時にできるのが特徴だ。

基本単位は「量子ビット」と呼ばれ、量子ビットの数をnとすると、最大で「2のn乗」通りの計算を同時に行える。

量子コンピューターは、大きく2種類に分類できる。1つは「量子ゲート方式」と呼ばれるデジタル型の量子コンピューターで、もう1つが「量子アニーリングマシン」に代表されるアナログ型の量子コンピューターだ。

IBMなどは、量子ゲート方式を開発中。汎用性があるため、量子コンピューターの本命と言われているが、現在、量子ビットは十数個にとどまっており、実用化にはなお相当の時間がかかりそうだ。

ただ、仮に実用化されれば、通信暗号を短時間で読解できるようになるため、現在のセキュリティシステムの前提が覆る可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界EV販売は年内1700万台に、石油需要はさらに

ビジネス

米3月新築住宅販売、8.8%増の69万3000戸 

ビジネス

円が対ユーロで16年ぶり安値、対ドルでも介入ライン

ワールド

米国は強力な加盟国、大統領選の結果問わず=NATO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中