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クルーズ旅行ブームの中国、豪華客船建造に本腰 欧州造船業界は警戒

2017年7月26日(水)15時36分

7月25日、これまで1170億ドル(約14兆円)規模のクルーズ客船市場を支配してきた欧州造船会社は、国内のクルーズ旅行ブームに後押しされた中国勢の進出によって、その独占的地位を脅かされそうだ。写真は上海外高橋造船で6月撮影(2017年 ロイター/Aly Song)

これまで1170億ドル(約14兆円)規模のクルーズ客船市場を支配してきた欧州造船会社は、国内のクルーズ旅行ブームに後押しされた中国勢の進出によって、その独占的地位を脅かされそうだ。

国内の豪華客船クルーズ需要が年30%拡大するなか、中国政府は製造業振興策「中国製造2025」計画で、客船建造を主要目標の1つに掲げ、製造業の発展促進と同時に、造船所における雇用確保を狙っている。

付加価値の高いクルーズ客船市場に対する中国造船企業の進出は、複雑で豪華な客船建造や内装整備に高度なサプライチェーンを擁するこの業界リードしてきた欧州勢を慌てさせている。中国が数十年かけて貨物船市場を独占してきたように、客船市場でも独占するのではないかと懸念する声が欧州企業の一部から上がっている。

「この政府目標によって、競争に大きな歪みが生じる恐れがある」と、ドイツ造船・海洋工学連盟(VSM)のラインハルト・ルーケン氏は話す。VSMは、マイヤー・ベルフトなどの独造船会社が加盟している。「中国が目標を定めたなら、資源はほとんど無尽蔵だ」

ただ、高級カーペットから防音施工まで、豪華客船の建造には複雑なサプライヤー網が必要になることを考えれば、中国企業がクルーズ客船の建造技術を習得するのは容易ではないと、専門家は指摘する。

三菱重工業<7011.T>は昨年10月、客船世界最大手カーニバルから受注した2隻の豪華客船建造で20億ドルを超える損失を出し、大型客船事業から事実上の撤退を決めた。

「(豪華客船は)海上のホテルであり、少なくとも数百のサプライヤーが必要になる」と、ロイド船級協会で中国の海洋とオフショア事業部門を担当するリン・リー氏は言う。

中国による客船クルーズ市場への路線転換には、世界で貨物船需要が落ち込み、多数の中国の造船所が廃業に追い込まれたという背景もある。

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