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スーツはおしゃれの道具じゃない、「細身」では信用されない

2017年7月26日(水)11時33分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 まず大前提ですが、ビジネスファッション(スーツ)は、本来、むしろ年齢を重ねたほうが似合います。好例が映画『キングスマン』です。ロンドンの高級テーラーの地下がスパイ組織の本部で、スーツ姿のスパイたちがキレッキレのアクションを決める胸熱映画ですが、この映画には二人の男性主人公が出てきます。コリン・ファース1960年生まれ、そしてタロン・エガートン1989年生まれ。映画公開が2014年なので、アラフィフと20代ですが、アラフィフであるコリン・ファースのほうが俄然かっこよくて痺れます。役柄の不利さもありますがタロン・エガートンは青二才で影が薄く物足りません。最強のカードに見える「若さ」よりも「貫禄、威厳、堂々」のほうがスーツでは効くんだと気づかされて、痛快な気分になる一本です。

 若けりゃいいってもんじゃない。それなのに、若さにすがりつき細身スーツを着てしまう人が少なくないのはファッションメディアの責任も大きいでしょう。男性ファッション誌を見ると、中年以降になると欧米人のモデルが目立ちます。どの世代でも日本人モデルの出てくる女性ファッション誌と比べて遅れています。

 身近にいいお手本がないために、「太っていて、顔が大きくて、いい年なのに超細身スーツ」という独自解釈のヘンテコビジネスファッションが幅をきかせてしまっているのでしょう。21世紀にもなっていまだに脱亜入欧魂をメディアが出しているのは残念なことです。

【参考記事】独身男性の「結婚相手は普通の子がいい」は大きな間違い

細身スーツの弊害2:ウェイウェイして見える

 なぜ細身スーツがいただけないのかについて続けます。

 ビジネスファッションにおいて重視されることは、

①控えめであること
②清潔感があること

 の2点ですが、細身スーツは全然「控えめ」ではありません。

 会社生活において、上司に「この野郎」と思ったことなど一度もないという人がいたら相当タチの悪い嘘つきですが、「この野郎」と実際上司に言ってやったぜという人がいたらその人はアホです。そんなことが通用するのはドラマや漫画の中だけであり、現実は上司に楯突いたら会社に徐々に居場所がなくなっていくだけです。「自分の言いたいこと(=欲望)をそのまま伝えたところで相手に通じるわけがない」のだから、我慢をしたり、どう角を立てずに伝えるか、そのためのあらゆる工夫が仕事というものでしょう。

 一方、「イキリすぎ」の細身スーツは「俺ってスタイリッシュゥ! ビジネスシーンでもおしゃれ心を忘れない俺! そこにシビれる! あこがれるゥ!」な服装です。自我が最優先で、耐え忍ぶストイックさの痕跡を微塵も感じさせません。たとえ仕事自体はストイックにこなしたとしても、服装が「ウェ〜イ」なら、査定する側から、あいつ見た目が「ウェ〜イ」だしなあ、と実際の成果よりも低く見られる可能性は極めて高いでしょう。

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