最新記事

ブレグジット

英・EU離脱交渉、双方譲歩なく終了 合意なし離脱懸念でポンド下落

2017年7月21日(金)08時00分

7月20日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る協議は4日にわたる交渉会合を終えた。写真は交渉会合後、記者会見に臨むEUのバルニエ首席交渉官と英国のデービス離脱担当相(2017年 ロイター/Francois Lenoir)

英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る協議は20日、4日にわたる交渉会合を終えた。互いに歩み寄る姿勢はほとんど見せず、EU市民の権利保護などで隔たりが鮮明になったほか、アイルランドと英国との国境問題や離脱に伴う清算金の行方を巡っても不透明感が漂っている。

また、フォックス英国際貿易相が、合意なしで離脱する用意があるとの考えを示したことで、ポンドは急落した。

EUのバルニエ首席交渉官は、英国のデービスEU離脱担当相と臨んだ共同会見で、英国で暮らすEU市民の権利保護について「根本的な相違」があると指摘。EU司法裁判所がブレグジット後も市民の権利を保障すべきと述べた。

一方、デービス離脱担当相は、EUとの国家主権の共有を止めるために、英国民は離脱を決めたとし、司法の管轄は英国側にあるべきだと反論した。

バルニエ氏は、8月に行われる次回交渉ラウンドまで、清算金の支払いに関する英国の立場を一段と明確にするよう要請した。

一方、フォックス貿易相はBBCに対し、英国がEU離脱に合わせて結ぶEUとの自由貿易協定(FTA)について、「人類史上最も容易なものの一つ」になるとの見解を表明。一方で、EUとのFTAがなくても「生き残り」は可能だと主張した。

これを受けて、金融市場では合意なしの離脱を巡る懸念が高まり、ポンドは対ユーロで、8カ月ぶり安値に沈んだ。

ハモンド英財務相は、EUとのFTAが合意できなければ「極めてまずい結果だ」としており、国民投票前からEU離脱を支持してきたフォックス貿易相とは異なる考えを示している。

デービスEU離脱担当相は、英国は「処罰的な合意」は受け入れられないとしながらも、EU側も合意なしの離脱を求めると考える理由はないとした。

6月の総選挙で、メイ英首相率いる与党・保守党が過半数議席を失って以降、政府内の足並みの乱れが露呈している。

[ブリュッセル/ロンドン 20日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中