最新記事

一国二制度

香港返還20年 若者たちは中国への「愛国心」薄く

2017年7月1日(土)11時37分

2012年、当時15歳の学生黄之鋒(ジョシュア・ ウォン)氏が、義務教育のカリキュラム内容が、中国への愛国心を育成する「洗脳教育だ」として反発し、数万人規模のデモを行った。行政側は、カリキュラムの撤回に追い込まれた。

2年後の反政府デモ「雨傘運動」では、ウォン氏を先頭に、香港行政長官選挙の民主化を中国政府に要求。79日続いた路上での抗議活動の末、最終的にこの要求は無視された。

複数の香港の書店主が2015年に中国本土の工作員に拉致され、香港独立を支持する若手政治家2人の議員資格が2016年に取り消されたことで、「一国二制度」への信頼がさらに揺らいだ。

学生のキャンディ・ロウさんは、香港がさらなる管理下に置かれることになるのではと懸念する。

「中国では、大衆の監視が広がっている。もし香港が悪くなるなら、そういう風になるのかも知れない」と、彼女は言う。「それは、目に見えない恐怖だ」

愛国心

香港では、自決権や、さらには独立まで求める若者が増えており、中国政府は警戒している。

中国共産党序列3位で、香港問題を管轄する張徳江氏は先月、「愛国者」型にはまるよう、「香港の若者に、国家と法律の教育を強化し、若い時から国について正しい考えを育てる必要がある」と述べた。

次期香港行政長官の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏は、中国の新華社に対し、「自分は中国人」という意識の養成を保育園レベルから進めると述べた。

新華社によると、返還20周年記念式典の一環で、12万人以上の香港の若者が、中国関連の交換プログラムに参加する。うちいくつかは、香港行政府がスポンサーとなっている。

だがこうした愛国心の押しつけは、より大きな反発を招く可能性がある。

「なぜ中国政府は、香港の人に中国を愛せと強要すればするほど、大きな反対を招くだけだということが分からないのだろうか」と、学生のジョジョ・ウォンさん(20)は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中