最新記事

香港

習近平、香港訪問――なぜ直前に劉暁波を仮釈放したのか?

2017年6月27日(火)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

劉暁波のお面をかぶって中国の圧政に抗議する香港市民(6月27日) Bobby Yip-REUTERS

香港返還20周年を記念して習近平国家主席が29日に香港を訪問する。その直前にノーベル平和賞受賞者で獄中にいる劉暁波氏を仮釈放した。末期癌とのこと。習近平は何を怖がっているのか?中国言論弾圧の真相を追う。

習近平国家主席の香港訪問

1997年7月1日、香港が中国(大陸、北京政府)に返還された日に、江沢民元国家主席が香港を訪問して香港返還祝賀会に出席したのを皮切りに、その後5年ごとに国家主席が7月1日前に香港を訪問して返還祝賀会に出席しスピーチをおこなっている。

たとえば2002年に江沢民が、2007年と2012年に胡錦濤元国家主席が出席してスピーチをした。

今般、6月29日から習近平が香港を訪問するのは、国家主席になってから初めてのことだ。9000人の警察が警戒に当たるとのことだが、それは毎回、激しい民主化のための抗議デモが展開されるからだ。

しかし、習近平政権になってから、あまりに言論弾圧が厳しくなってきたため、香港の若者たちの意気もそがれ、今年6月4日の天安門事件の日における抗議活動は、1989年の発生以来、最小規模となってしまった。1989年当時、その8年後には香港が大陸に返還されることをすでに知らされていた香港市民は、あまりの残虐性に驚き、100万人規模の抗議デモが起きたものだ。その日から毎年ろうそくを灯した追悼集会の形を取って抗議デモが絶えたことはなかった。

しかし、習近平政権になってから急速に下火になり、今年のデモ参加者は警察発表で1万8千人、主催者発表で11万人だ。きっと実際は数万人もいなかったにちがいない。

なぜこんなことになってしまったのか。

それは2014年にあった雨傘デモという民主化運動を中国大陸側が徹底的に鎮圧したことと、その後、香港の出版関係者などが次々に拘束されたことなどが挙げられる。見せしめ刑に等しいような逮捕、拘束を当局は続けてきた。

香港では、たとえば2002年に「国家安全法」を制定しようとすることに反対した若者たちが50万人の市民を動員して抗議デモを展開し、遂に廃案にまで持っていった経験がある。また2011年には愛国主義教育を香港にも導入させようとした当局に若者たちが激しく抗議して導入を延期させることに成功している。しかし、それらはすべて習近平政権が誕生する前までのこと。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

リスクオフ加速、日経一時1300円超安 イスラエル

ワールド

イスラエルのミサイルがイラン拠点直撃、空港で爆発音

ワールド

ロシア凍結資産、G7がウクライナ融資の担保に活用検

ワールド

トランプ氏口止め事件公判、陪審員12人選任 22日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中