最新記事

フランス政治

議会選圧勝のマクロン新党、改革実行は労組の協力がカギ

2017年6月20日(火)08時50分

ミュリエル・ペニコー労働相。パリで5月18日撮影(2017年 ロイター/Benoit Tessier)

フランスの労働組合は、18日に行われた国民議会(下院)の決選投票の結果、議会における伝統的な盟友の多くを失った。だが、マクロン大統領が成功裏に改革路線を押し進めたければ、労組を踏み倒して行く訳にはいかない。

マクロン大統領と結成1年を迎える彼の新党「共和国前進」は、公式発表によれば過半数を大きく上回る議席獲得が確実で、調査会社の予測では、定数577議席のうち350議席以上を獲得する見通しとなっている。これにより、マクロン大統領は、議会の協力を得て、冗長な議会交渉を経ることなく改革を進めることが可能となる。

マクロン氏は、左派を叩きのめした。とはいえ、フランスの強力な労組は慎重に扱わなければならない。

焦点は、公約通りに労働市場に柔軟性をもたらせるかどうかだけではない。大統領がどう労働改革を進めるかによって、失業保険や年金など、今後に控えるさらなる改革の方向性が決まる。

労組の多くは、マクロン大統領の改革政策を不安視し、性急な改革の実行を恐れているが、一方で、マクロン政権がこれまでのところ、労組側と緊密に協議し、今後数週間で詳細な改革案を策定すると約束したことには安堵している。

問題は、マクロン大統領が今後の改革の過程でも、労組側の意見を取り入れ続けるかどうかだと、フランスで3番目に大きい労組「労働者の力」(FO)のジャンクロード・マイー書記長は指摘する。

「彼(マクロン氏)は、『同意しないなら、力で改革を押し進める』と言うだろうか」と、マイー氏はロイターのインタビューで語った。「もしそうなら、彼の政権は労組関係で良くない滑り出しをすることは確実だし、緊張関係が生まれる」

フランス最大の民間企業労組で、改革に最も理解を示すフランス民主労働連盟(CFDT)でさえ、同連盟が提出する対案が無視されれば、抗議デモを行う可能性を排除していない。

「われわれは、他のすべての人たちと同様に、民主的な方法で意見を表明する可能性を残しておく。もし抗議活動を行う必要があるなら、そうする。もし企業内で動員をかけなければならないなら、そうする」。CFDTのローラン・ベルジェ氏はロイターにそう語った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中