最新記事

内モンゴル

モンゴル人を大量「虐殺」 記憶遺産に値する中国の罪

2017年6月20日(火)10時15分
楊海英(本誌コラムニスト)

ヤルタ協定での裏取引

だが米英ソが45年2月に秘密裏に交わしたヤルタ協定でモンゴル人民共和国をソ連の勢力圏に置き、南モンゴルを中国に売り渡した。北モンゴルの権益を餌に、ソ連に対日参戦を促す裏取引だった。ヤルタ会談の場にモンゴル人も日本人もいないまま、戦後モンゴルは国土の南半分を中国に、日本は北方四島をロシアに占領されて今日に至る。

中国は「解放者」として内モンゴルで過酷な弾圧を行った。今でも草原は漢民族に占領され、抵抗するモンゴル人はほぼ毎日のように逮捕されている、とニューヨークに本部を置く南モンゴル人権情報センターは世界に発信している。有無を言わさず牧畜民を農耕民に変え、モンゴル語による教育を廃止して中国語を強制する文化的ジェノサイド(大虐殺)を強行している、とクリルタイも中国を批判する。

【参考記事】共産党が怖がる儒教の復権

ただし、クリルタイが文革期のモンゴル人虐殺を世界記憶遺産として申請するのは中国を批判するためではないという。人道に対する罪を暴き、同様の悲劇が二度と起こらないようにしたいとの願いからだ。

中国によって「南京大虐殺」文書が記憶遺産に登録されるなど、ユネスコは日本批判の道具にされつつある。文革期のモンゴル人虐殺の登録実現で、信頼を取り戻してほしいものだ。

[2017年6月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英金利、「かなり早期に」中立水準に下げるべき=ディ

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ

ワールド

ゼレンスキー氏が19日にトルコ訪問、ロシアとの交渉

ビジネス

日産、九州工場で24日から再び減産計画 ネクスペリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中