最新記事

イギリス政治

英総選挙で大激震、保守党の過半数割れを招いたメイの誤算

2017年6月9日(金)15時20分
エミリー・タムキン

保守党はマニフェストで、高齢者の介護費用を本人が死亡した後の自宅売却でまかなう福祉改革を提案したが、これに対して、残された家族が自宅を手放さなければならならない「認知症税」だという批判が上がった。そこでメイは、この負担分の上限を設けることで、実質的な政策の「撤回」を余儀なくされた。

「鉄の女」と呼ばれたサッチャーとは、比較にならない弱腰だ。またメディアへの対応も不十分で、コービンさえ出演したテレビ党首討論に姿を見せなかった。

これに対してコービンの労働党はマニフェストで、医療サービスへの大規模支出や大学授業料の再無料化といった福祉充実策を並べて有権者の支持を拡大した。

選挙戦中のメイは、他のEU加盟国から見てとても信頼に足る指導者には見えなかっただろう。ブレグジット交渉はこの6月末から本格化する予定だったが、メイ自身がその実態を理解していないという報道もされている。

前述のドブスは、「総選挙が終わってもイギリスは何ら前進していない。ブレグジットが何を意味して、イギリスにどう影響するか具体的な方針は見えない」と話している。

【参考記事】イギリス離脱交渉の開始とEUの結束

他の欧州諸国(特にドイツ)のメディアはさらに手厳しい。欧州の各紙には「大英帝国の夢再び......しかしそれはただの幻想」とか、強さを示すはずだったメイは「どうしてしまったのか?」という見出しが躍った。

メイは政権安定のために実施した総選挙で保守党の議席を改選前より減らし、単独過半数まで失った。さらにブレグジットに立ち向かうイギリスの団結も揺らいでいる。むしろこの選挙で、イギリスが今やそれどころではないことを示してしまった。とんだ計算違いだ。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IMF、スペインの26・27年成長予想を下方修正 

ビジネス

NYラガーディア空港閉鎖、エア・カナダ機が地上車両

ビジネス

2月コンビニ売上高は1.6%増、気温高くアイスクリ

ワールド

エネルギーショック、22年と異なるが、油断禁物=ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 3
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記者に、イスラエル機がミサイル発射(レバノン)
  • 4
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 5
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    「筋力の正体」は筋肉ではない...ストロングマンが語…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    人気セレブの「問題ビデオ」拡散を受け、出演する米…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中