最新記事

自動車

日本も「空飛ぶ車」に参入へ トヨタら支援で東京五輪の点火めざす

2017年6月5日(月)08時28分

6月3日、2020年開催の東京五輪・パラリンピックの聖火台に「空飛ぶ車」で火を灯したい――。そんな若手技術者らの夢をトヨタ自動車グループ15社が支援する。写真は3日、試作機を点検するトヨタの若手技術者など約30人が中心メンバーになっている有志団体のスタッフ(2017年 ロイター/Kwiyeon Ha)

2020年開催の東京五輪・パラリンピックの聖火台に「空飛ぶ車」で火を灯したい――。そんな若手技術者らの夢をトヨタ自動車<7203.T>グループ15社が支援する。

技術者自ら「奇跡がなければ実現できない」と語るほどの難しいプロジェクトだが、各社は先月、総額4250万円の資金支援を決めた。まずは18年末までに有人飛行ができる試作機の完成をめざす。

開発を進めているのは、トヨタの若手技術者など約30人が中心メンバーになっている有志団体「CARTIVATOR(カーティベータ―)」。代表を務める中村翼氏(32)の計画が12年9月に社外のビジネスコンテストで優勝したことをきっかけに発足、14年1月に開発に着手した。平均年齢およそ30歳というコアメンバーは勤務時間外の寸暇を惜しんで、開発に取り組んでいる。

「あと3年で本当に飛ばすとなると、かなりの奇跡を起こさないといけない」。中村代表は3日、豊田市でのロイターとのインタビューで、プロジェクトの厳しさをこう表現した。同氏によると、開発の現状は「自動車が浮上する最初の第一歩が見えてきた段階。ステップとしてはまだ10あるうちの1、2くらい」。メディアに同日公開した現在の試作機は、まだ安定浮上すらできず、わずか数秒で地面に落ちる。浮上時は騒音も大きく、課題は山積みだ。

しかし、「空飛ぶ車」は決して夢物語ではない。五輪での飛行を実現するための開発資金はまだ「数十億円必要」(中村氏)という壮大な計画だが、新興企業や航空機メーカーなどは飛行機能を持つ車を次世代モビリティの新たな候補として注目しており、相次いで開発への参入を表明している。

ライドシェア(相乗り)大手の米ウーバー・テクノロジーズ[UBER.UL]は4月には空飛ぶタクシーサービスの開発計画を発表、20年までの試験飛行をめざしている。欧州航空機大手エアバス・グループも1月、「空飛ぶ自動運転車」の試験機のテストを年内に行う計画を明らかにした。

今回のトヨタグループによる資金支援は夢を追う若手技術者らの意欲を支援することが主な目的。中村氏は、都市部や狭い場所でも離着陸や駐車ができるよう、「世界最小」を売りにした空飛ぶ電気自動車(EV)として 「25年には販売し、50年には誰もが全世界で飛べる時代を創りたい」と意欲を見せている。

(白木真紀、Ha Kwiyeon)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中