最新記事

科学

ディズニーランド「ファストパス」で待ち時間は短くならない

2017年5月7日(日)16時09分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「ファストパスはどのくらい有効か? それはもう......たとえば、スタンバイの列に並ぶ人の待ち時間が平均1時間半、ファストパスを使った人は待ち時間なし、ファストパスがなくて全員がスタンバイに並べば1時間としよう。つまり、ファストパスを使った9000人が待ち時間なしで、使わなかった3000人が平均1時間半、延べ4500時間待つことになる。ファストパスがあれば1万2000人の待ち時間の合計は約6カ月(延べ4500時間)、ファストパスがないと約16カ月(1万2000人全員が1時間ずつ待って延べ1万2000時間)。ファストパスで10カ月分の待ち時間を節約できた!」

 ファストパスを使って満足したゲストは、そのコツを教えたくなる。(ディズニーランド攻略ガイドの著者として知られる)ジュリー・ニールもブログで次のように紹介している。

ファストパスを最大限に活用する方法

 グループの「ファストパス係」を決める。その人が全員分のパスポートを持ち、1日中パークを走り回って全員分のファストパスを発券して、指定時間にも気を配る。パパの出番!

 常に1枚以上のファストパスを持っていること。つまり、常に少なくとも1つのアトラクションに乗る時間が決まっている。パークに入場したらまず1枚手に入れて、その後はできるかぎり多く発券しよう。

 ファストパスの指定時間に遅れてもあわてないこと。発券した当日なら、事情によってはディズニーがなんとかしてくれる。

 午前10時前と夜遅く以外は、ファストパスがあるアトラクションでは必ず使うこと。

 もちろん、ファストパスの利用者はこのシステムをとても喜んでいる。では、待ち時間は実際にどのくらい短くなるのだろうか。驚くことに答えは──「まったく短くならない」。ファストパスがあってもなくても、人気アトラクションの待ち時間は同じなのだ。先に紹介したディズニーファンの分析のように、ファストパスが待ち時間を「なくす」と誤解されている。しかし実際は、列に並んで待つ代わりに、その場所からは解放されるというだけで、それほど混んでいないアトラクションに乗ったり、食事をしたり、トイレに行ったり、ホテルの部屋やスパで休憩したり、買い物したりしながら「待っている」のだ。

 アトラクションの前に行ってファストパスを発券してから実際に乗るまでの「待ち時間」は、ファストパスがなかったころより長くさえなっているかもしれない。ファストパスがあってもなくてもアトラクションの収容能力は変わらないのだから、予約システムを導入しただけで、より多くのゲストが乗れるようになることはありえない。ここでもディズニーは、知覚が現実に勝ることを証明している。ファストパスは実に天才的な発想だ。人々が感じる待ち時間の意味を完全に変えて、これほどたくさんの人をすっかり興奮させているのだから。

【参考記事】性科学は1886年に誕生したが、今でもセックスは謎だらけ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中