最新記事

北朝鮮問題

中国は中朝同盟を破棄できるか?

2017年5月5日(金)20時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

軍事力を誇示する北朝鮮 Damir Sagolj-REUTERS

中国が北朝鮮に対して持っているカードには、石油の輸出を止める以外に、中朝軍事同盟を破棄するという選択もある。中国共産党系新聞の環球時報は5月4日、その可否に関して論じている。

環球時報が社説

5月4日、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」が「中朝友好互助条約 中国は堅持していくべきなのか?」という社説を載せた。中朝友好互助条約は1961年7月11日に調印された条約で、第二条に「両締約国は、共同ですべての措置を執りいずれの一方の締約国に対するいかなる国の侵略をも防止する。いずれか一方の締約国がいずれかの国又は同盟国家群から武力攻撃を受けて,それによって戦争状態に陥つたときは他方の締約国は、直ちに全力をあげて軍事上その他の援助を与える」という「参戦条項」がある。そのためこの条約を「中朝軍事条約」と呼ぶことが多い。

第一条には「両締約国は,アジア及び全世界の平和並びに各国人民の安全を守るため,引き続きあらゆる努力を払う」という条項がある。ここでは暫時、中朝条約と略記することにしよう。

20年ごとの更新で、これまで1981年、2001年に更新されてきた。現在は2021年まで有効ではある。

社説は以下のように書いている(概要)。

――朝鮮半島問題が深刻化するにつれて、中朝条約は如何なる役割をしているのか、北京はこの条約に対していかなる考え方でいるのかに関して、早くから中国国内外の学者から議論が噴出していた。

たしかにこれまで、中朝条約があるために朝鮮戦争以来、朝鮮半島で戦争が起きるのを防ぐ役割は果たしてきた。米韓が朝鮮半島を統一してしまおうとしても、中国の軍事力を考えて抑制してきた要素はある。中国にとっては、米韓と北朝鮮の間で戦争が起きたときに、そこに巻き込まれてしまうという不利を招くものではあるが、この役割を考えると、「ないよりはいい」と考えられてきた側面は否めない。

しかし北朝鮮は核を保有しようとして、自ら地域の安全を破壊し、中国の国家安全を損ねており、この行動は明らかに中朝条約の主旨に違反している。国連安保理の決議に反して核・ミサイルの開発を強化し米朝の軍事的衝突を惹起しているのも条約違反だ。

北朝鮮は核実験やミサイル開発を停止し、米韓は北朝鮮を攻撃するための軍事的威嚇を停止しなければならない。

万一米朝間に戦争が発生したら、隣接する中国は大きな被害を被るリスクを常に孕んでおり、中国としてはどの国が中国の利益を損ねるような行動をしたとしても、絶対に反対する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中