最新記事

チベット

ダライ・ラマの中印国境訪問で両国間に火花

2017年4月6日(木)17時20分
エミリー・タムキン

インドと中国の係争地を訪れたダライ・ラマ14世 Anuwar Hazarika-REUTERS

<チベットの指導者ダライ・ラマ14世が訪問したのは、中国とインドが領有権を争う国境地帯。怒る中国に対しインドも挑発的だ>

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が亡命先であるインドのアルナーチャル・プラデーシュ州を訪問したのに対し、中国は5日に懸念を示した。

国連とインドにとって、ヒマラヤ山脈東部の同州はインドが実効支配するインド領という認識だが、中国側は同州の約9万1000キロ平方メートルの領有権を主張している。ダライ・ラマの訪問を許す権利はインドにはないというのだ。

中国は長年にわたりチベット自治区の独立を訴えるダライ・ラマ(81)を危険視し、その活動を非難してきた。

中国外交部の華春瑩報道官は、ダライ・ラマが同州を訪問することで国境紛争が再燃し、中印関係の健全な発展に悪影響をもたらすと発言。インド政府に問題提起した。

【参考記事】ダライ・ラマ亡き後のチベットを待つ混乱

【参考記事】ダライ・ラマ訪問という外交リスク

一方、インド内政部次長キーレン・リジジュは4日、今回で7回目を数えるダライ・ラマ14世の訪問について「アルナーチャル・プラデーシュ州はインドの一部であり、中国はインドの内政に干渉するべきでない」と述べた。

中印関係はすでに緊張状態にある。中国軍によるサイバー攻撃、中国のインド洋進出、中印国境の紛争地カシミールを通ってパキスタンに抜ける中国パキスタン経済回廊(CPEC)計画など、問題が山積みだ。

インドは2014年にナレンドラ・モディ首相が就任してから、チベット亡命政権のロブサン・センゲ首相を就任式に招待するなど、中国に対しこれまで以上に挑発的な動きをしていると、米国際戦略研究センター( CSIS )で対印政策を担当するリック・ロッソウ上級顧問は言う。

【参考記事】中国牽制を狙うモディ外交

モディだけではない。アルナーチャル・プラデーシュ州のペマ・カンドゥ首相はダライ・ラマを歓待し、「インドと国境を接する隣国は中国ではなくチベットだから、ダライ・ラマの来印についてとやかく言う資格は中国にはない」と中国の懸念を切り捨てた。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中