最新記事

インタビュー

実績32億円以上、行政の資金調達も担うクラウドファンディングReadyfor

2017年4月27日(木)19時21分
WORKSIGHT

防災への備えや予防医療に関係するプロジェクトも増えました。例えば、災害時に安心しておいしく食べられる備食を本の形の箱に詰めた「東京備食」の生産・販売を支援するプロジェクト**** も、目標を上回る支援金が寄せられました。

公共やそれに近い領域のプロジェクトが増えたということで、補助金などの税金だけに頼るのでなく、資金調達のあり方が多様化していることを実感します。事業者や研究者、行政関係者など、それぞれの人がそれぞれのやりたいことに向かって、広く社会の人に支援を呼び掛けて資金調達に成功している。その一端を担えることは、私たちにとっても誇らしいことです。

支援者にとってもリスクを分散できる

もう1つ、2016年のトレンドとしては「地域発の創業」が挙げられます。そもそも2015年までにも地域で新しい企業を作る、地域の企業が新規事業やイノベーションを創出する、あるいは地域密着型のカフェを作るといった案件が増えていたんですね。

小規模でまだ実績のない事業は金融機関も融資をしにくいですが、クラウドファンディングなら財政的な担保はいらないし、多くの人からお金をノーリスクで集めることができます。そうしたメリットに着目いただいたこともあって、2016年は地方銀行や信用金庫など地域の金融機関とも連携し、規模の小さな案件をReadyforを通して応援するようにしたところ、地域発の創業案件のさらなる拡大につながったというわけです。

例えば、これは秋田県の北都銀行からご紹介いただいた案件ですが、地元の元料亭を「あきた舞妓」がお茶や踊りを披露する文化産業施設としてリノベーションするプロジェクト***** に1,400万円もの支援金が寄せられました。実行者は20代の女性です。私も20代で創業を経験した身なのでよくわかりますが、若いと起業の元手となるような実績や資産がないので、金融機関の融資を取り付けるのが本当に難しいんです。そういう人にとって、1,400万円はものすごく価値が大きい。チャレンジに向けて背中を押してもらえます。

お金を出す側にしても、誰か1人が全額負担するのでは事業が失敗したとき大きな損失になりますが、多くの人が少しずつ負担するのでリスク分散できます。実行者にも支援者にも使いやすいツールということで、クラウドファンディングは資金調達の一手段として地域の事業にも今後もっと広まっていくのではないかと見ています。

ws_meraharuka170427-2.jpg

やりたいことの全てをかなえていく、それがReadyforのミッション

今では月に200件ほどのプロジェクトが新たに登場していますが、サービスを開始した2011年は年間の掲載案件数はわずか50件ほど。続けてこられたのは、創業したのが大学院1年生のときで、収益性や経営についてあまり考えていなかったからです(笑)。Readyforを使ってくれる人たちがいて、その数が少しずつでも増えていることが単純にうれしかったですね。

社員が増えた今でこそ、少しは経営や収益性についても考えをめぐらせるようになりましたけど、それでもやはり、やりたいことの全てをReadyforの場でかなえていくのが私たちのミッションだと考えています。だから掲載するプロジェクトの方向性や内容には特に制限を設けていません。

【参考記事】日本の地域再生を促すシビックプライドとは何か

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

基調的な物価上昇率、徐々に高まり 見通し期間後半は

ワールド

米中外相が北京で会談、中国のロシア支援など協議

ワールド

中国全人代常務委、関税法を可決 報復関税など規定

ワールド

エクイノール、LNG取引事業拡大へ 欧州やアジアで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中