最新記事

<ワールド・ニュース・アトラス/山田敏弘>

米ビール業界を襲うマリファナ「快進撃」

2017年3月24日(金)19時00分
山田敏弘(ジャーナリスト)

スプリング・ブレイクと言えば、ビーチパーティーでバカ騒ぎというのが定番 Michael Spooneybarger-REUTERS

<娯楽使用のマリファナが合法化されたアメリカの各州で、マリファナの人気に押されてビールの消費が落ち込んでいることがわかった>

アメリカで3月後半と言えば、スプリング・ブレイク(春休み)。全米の大学で、学生たちがパーティで大いに盛り上がる季節だ。

この時期になると決まってアメリカでは、浮かれた学生のニュースが流れる。3月21日、フロリダ州でパーティーに向かう途中だった19歳の学生が、ピックアップトラックの荷台にビール7ケースとマリファナ(大麻)を大量に積んで猛スピードで走行し、さらに24歳と偽るために身分証を偽造していたことも判明して逮捕され、メディアで大きく取り上げられた。

いかにもアメリカらしい「おバカ」なニュースだが、アメリカの若者の間では、ビールやマリファナは盛大に楽しむのに欠かせない必須アイテムになっている。だがそんなアメリカで今、ビールが近い将来、存在感を失うかもしれないことが話題になっている。

アメリカのマリファナ研究団体「カナビズ消費者グループ(C2G)」が最近公表した調査結果によれば、現在、アメリカ人の4人に1人が、ビールよりもマリファナに金を使うようになっていることがわかった。

マリファナ派の中には、まだマリファナが合法化されていない州の住民も含まれ、彼らの多くは娯楽用のマリファナが地元で合法になれば、ビールよりもマリファナを選択すると答えている。

【参考記事】キリンのビールが売れなくなった本当の理由

アメリカでは最近、マリファナの娯楽使用を合法化する動きが進み、現在8つ州がすでに合法化している。そんな背景もあってマリファナ吸引者はどんどん増加中で、2016年には2400万人以上のアメリカ人がマリファナを使用している。

しかもマリファナは、合法化が進む中で若者たちの間にも広がりを見せている。最近の若者は、酒を飲んで騒ぐよりもマリファナでキメるのを好む傾向がある。

言うまでもなく、この傾向は米ビール業界にとっては深刻な打撃になりそうだ。全米のビールの売り上げは現在、年間1000億ドルに達する。だがマリファナが全米で合法化されれば、ビール業界は全売上の7%ほどを失うと指摘されている。これは20億ドル規模の損失を意味する。

他の州に先駆けて娯楽使用のマリファナを合法化したコロラド州やオレゴン州、ワシントン州では、すでにビールメーカーの業績が軒並み悪化しているという報告がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英国王夫妻、トランプ米大統領夫妻をウィンザー城で出

ビジネス

三井住友FG、印イエス銀株の取得を完了 持分24.

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中