最新記事

日本企業

キリンのビールが売れなくなった本当の理由

2017年3月8日(水)11時52分
中山一貴(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

4月発売のノンアルコールビール「零ICHI(ゼロイチ)」は復活の起爆剤となるか

「圧倒的な成功体験が邪魔をして、競合対策が遅れてしまった」。キリンビールの布施孝之社長は、かつて8割を誇ったノンアルコールビールの国内シェアが、10年足らずで1割にまで落ち込んだ原因をそう分析する。

2月8日、同社はノンアルビールの新製品、「零ICHI(ゼロイチ)」を4月11日に発売すると公表した。主力ビール「一番搾り」と同じ製法を用いた、ビールに近い味わいをCMや店頭販促で大々的に訴求し、2020年にシェア3割までの回復を狙う。

発売1年でシェア急落

2009年に発売した「キリンフリー」は、既存製品が微量のアルコールを含んでいたのに対し、競合他社に先駆けてアルコール0.00%を実現。年間の販売数量目標を2カ月ほどで達成するという大ヒットを記録したものの、翌年からサントリービールやアサヒビールが相次いで「オールフリー」や「ドライゼロ」といった競合品を投入すると、急速にシェアを落としていった。

キリンビール商品開発研究所の土屋義徳所長は「ノンアルへの広告・販促投資をしっかりしていれば、あれほど落ちなかったはず」と振り返る。

このとき、親会社であるキリンホールディングス(HD)の目は国内ではなく、海外に向いていた。

2007年以降、キリンHDが海外でのM&Aに投じた資金は1兆円を超える。2代前の加藤壹康元社長は豪州事業拡大のため5000億円超を出資。2011年に三宅占二前社長は約3040億円でブラジルのビール大手を買収した。いずれも、人口減少で縮小する国内ビール市場を憂えての一手だった。

犠牲になった国内ビール事業

海外への投資を急速に増やす一方で"犠牲"になったのが、売上高の3割、営業利益の5割を占める国内ビール事業だった。資金を海外に振り向けた分、キリンビールは2007年以降、広告・販促投資を800億円前後に抑制した。

そのため、1000億円前後の投資を続けた競合のアサヒに、国内ビール類のシェアを一気に奪われていった。キリンフリーも、広告・販促投資抑制のあおりを食った製品の一つだった。

toyokeizai170308-1.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

再送-英中銀、全会一致で金利据え置き 紛争によるイ

ビジネス

米国株式市場=続落、27年まで利下げなしの見方広が

ワールド

イスラエル、カスピ海のイラン海軍「無力化」 18日

ワールド

EXCLUSIVE-米国民の6割超、トランプ氏がイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 5
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 6
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    トランプ暴走の余波で加熱するW杯「ボイコット論」..…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中