最新記事

極右

オランダのパラドックス、豊かな国で極右政党台頭の理由

2017年3月10日(金)08時56分

 3月3日、経済が順調にもかかわらず、有権者は主流派に背を向け、反主流派的なポピュリズムに賛同しているのだ。この傾向が特に顕著なのがオランダだ。写真は総選挙を15日に控えたオランダ首都アムステルダムで、張り出された候補者のポスター。1日撮影(2017年 ロイター/Michael Kooren)

オランダのフォーレンダムは、こぎれいで豊かな港町だ。犯罪や失業もほとんどなく、とうてい対立の温床には見えない。だが3月15日の同国総選挙では、3分の1の有権者が、反移民を掲げる極右政党「自由党」のヘルト・ウィルダース党首を支持するとみられている。

ウィルダース党首の高い人気は、西側の民主主義諸国が抱える現状に挑み、欧州連合(EU)を揺るがす「パラドックス」を浮き彫りにしている。経済が順調にもかかわらず、有権者は主流派に背を向け、反主流派的なポピュリズムに賛同しているのだ。

この傾向が特に顕著なのがオランダだ。オランダ経済は今年、ユーロ圏で最も好調になる見込みで、幸福度や物質的な満足を示すグローバル指標によれば、オランダ国民は常に最上位近くにランクされている。

オランダにおける反主流派感情は、「何よりもまず文化やアイデンティティに由来するもので、経済とはあまり関係がない」。そう語るのは、アムステルダム大学の政治学者としてEUにおける極右政党の台頭を研究するサラ・デランゲ氏だ。

こうした感情は、EU離脱を決めた英国民投票や、ドナルド・トランプ氏が勝利した米大統領選に見られた人々の不満と呼応するものだ。仮にウィルダース氏が権力獲得に至るほどの勝利を収めないとしても、オランダ総選挙は、ポピュリストによる政治的反動の次なる幕開けとなるだろう。

世論調査では、ウィルダース氏率いる自由党は改選前の2倍以上となる26議席にまで勢力が拡大すると予想されている。41議席から27議席への転落が見込まれるマルク・ルッテ首相の保守党に肩を並べる勢いだ。連立与党の労働党は、現在の38議席から14議席に転落するとみられている。

中道政党が自由党との連立を否定しているため、ウィルダース氏は結局のところ野党の立場を維持する可能性が高い。とはいえ、中道政党も移民制限に賛同するなか、ウィルダーズ氏は、すでに政界の主流を極右寄りに動かすことに成功していると言えるだろう。

長年にわたるリベラルな移民政策を巡る、都市部の親EU派政治エリートに対する怒りが、ウィルダーズ人気の源泉となっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ウェイモ、来年自動運転タクシーをラスベガスなど3

ビジネス

欧州の銀行、米ドル資金に対する依存度高まる=EBA

ワールド

トランプ氏、NY市長選でクオモ氏支持訴え マムダニ

ワールド

ウクライナ、武器輸出・共同生産拠点を独とデンマーク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中