最新記事

アメリカ政治

ウィキリークスはCIAを売ってトランプに付いた

2017年3月9日(木)19時20分
マックス・ブート

つまり、トランプはCIAの「なりすまし」作戦の犠牲者だったというのだ。2001年の9.11(アメリカ同時多発テロ)は米政府の犯行だったとか、2012年のサンディフック小学校銃乱射事件はあらかじめ仕組まれたヤラセだったなど、トランプが絶賛するラジオ司会者アレックス・ジョーンズが垂れ流す陰謀説を信じがちな聴衆なら、この手の話も極めて信ぴょう性が高いと信じてしまう。CIAは韓国サムスン製のスマートテレビを使って会話を傍受できるなど、今回ウィキリークスが暴露した他の情報も、オバマに盗聴されたというトランプの主張に真実味を与えるものだ。

先日はジェフ・セッションズ司法長官が上院の公聴会で「ロシアの代表者と接触したことはない」と証言したのが嘘だったとばれて、今後ロシア疑惑の調査には関与しないと表明させられるなど、トランプにとっては不運な日が続いていた。そんな中、話題を変えてくれたのがウィキリークスだ。先週は、守勢に立たされていたのはトランプだった。今や形勢が逆転し、ウィキリークスに機密情報が漏れた原因やその内容をめぐり、不名誉な質問攻めにあっているのは情報機関のほうだ。

今回の暴露があったのは、まったくの偶然かもしれない。だがこれまでウィキリークスが、米大統領選でトランプを勝たせるためにロシアの情報機関に利用されてきた経緯を考えると、リーク元の特定だけでなく、なぜ今のタイミングで公開されたのか、ますます疑問が深まる。たとえホワイトハウスとロシア政府が現時点で共謀していないとしても、双方のビジョンはあまりに密接に重なる。プーチンもトランプも、自分たちの政権の邪魔になる米情報機関の威信を落としたいのだ。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中