最新記事

北朝鮮

金正男の遺体は北朝鮮引き渡しへ 真相は迷宮入りとの見方も

2017年2月16日(木)18時58分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

だが、逮捕された容疑者たちのパスポートに書かれた国籍が正しいかどうかは疑わしい。北朝鮮の工作員は第三国のパスポートを所持しているのが一般的だからだ。韓国政府当局者は「(1987年の大韓航空機爆破事件の主犯である)金賢姫も日本国籍の偽造パスポートを持っていた。1983年ミャンマーのアウンサン爆破テロの際に拘束された北朝鮮のテロ要員も外国の偽造パスポートを所持していた」と指摘したという。

また今回、金正男を空港内で殺害したとされる容疑者の女性が、空港内の防犯カメラに正面から映っていたこと、さらに犯行の2日後に現場に戻って逮捕されたこと、さらに犯行について「いたずらをしただけ」と供述したことなど、北朝鮮による工作活動としてはあまりにずさんな点が多いからだ。

外交関係者の間ではマレーシア当局が、北朝鮮と韓国、中国などの利害関係が複雑で、国際社会が注目しているこの事件について、明解な捜査結果を出すのはむずかしいのではないかという予想が出てきている。韓国政府筋は、「マレーシア政府が金正男の遺体の解剖検視だけでなく、捜査をするのにも時間がかかり、結果を断定して公表するのは難しいだろう。複雑な外交関係を考慮せざるを得ない」と迷宮入りもやむなしと考えていることを明らかにした。

検視には北朝鮮大使が立ち会い

韓国メディア、マネートゥデイはマレーシア警察当局による検視の様子についても伝えた。

金正男の遺体は15日、クアラルンプール総合病院内の解剖検査室で12時45分から夕方8時まで7時間にわたって解剖され検死が行われた。これには在マレーシアの北朝鮮大使館員も立ち合った。また韓国の国家情報院(かつてのKCIA)から指紋と写真が提供され、金正男本人であることが確認されたという。

マレーシアのハミディ副首相は、北朝鮮に金正男の遺体を引き渡す方針を明らかにしたが、死因を特定することは出来ないと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪中銀、今後の追加利下げを予想 ペースは未定=8月

ワールド

エルサルバドルへ誤送還の男性、再び身柄拘束 ウガン

ワールド

トランプ米大統領、デジタル課税実施国への追加関税を

ワールド

中国高官、貿易交渉で週内訪米 大豆購入・技術輸出規
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中