最新記事

ロシア

プーチン、収賄容疑の経済相を解任 クレムリンの勢力争いとの見方も

2016年11月16日(水)11時20分

11月15日、ロシアのプーチン大統領は、200万ドルの賄賂を受け取った疑いで逮捕されたウリュカエフ経済発展相を解任した。モスクワの地方裁判所で撮影(2016年 ロイター/Maxim Zmeyev)

 ロシアのプーチン大統領は15日、200万ドルの賄賂を受け取った疑いで逮捕されたウリュカエフ経済発展相を解任した。現職の政府高官の逮捕としてはソ連崩壊後で最高位。

 国営の石油最大手ロスネフチが中堅石油会社バシネフチの株式を取得した件に絡み、「肯定的に」評価した疑いが持たれている。

 ロスネフチは10月、およそ3300億ルーブル(50億ドル)でバシネフチの株式約50%を取得した。

 ウリュカエフ容疑者の逮捕は、ロスネフチの最高経営責任者(CEO)でプーチン大統領の側近でもあるゴール・セチン氏と、ロスネフチが国有資産の取得を進めることに反対する政府内の勢力との対立を示している可能性がある。

 モスクワの裁判所に出廷した同容疑者は容疑を否認した上で、名誉を守るために捜査に協力すると述べた。

 ペスコフ大統領報道官はタス通信に対し「これは深刻なことだ」と述べ、「いずれにしても判断できるのは裁判所だけだ」とした。

 同報道官は、ロスネフチのバシネフチ株取得は見直されるかとの記者団の質問に対し「全く影響しない」と言明した。

 関係筋がこれまでにロイターに明らかにしたところによると、ロスネフチによるバシネフチ株取得は政府内で勢力争いの焦点となっていた。

 セチン氏がバシネフチ株の買収承認を働き掛ける一方で、メドベージェフ首相の周辺を含む自由経済を重視する一派は、民間投資家への売却を主張し強く反対していた。

 ウリュカエフ容疑者は当初ロスネフチへの売却に反対していたが、最終的には承認した。

 ロシア産業企業家同盟のアレクサンドル・ショーヒン会長はウリュカエフ容疑者に対する容疑に疑問を呈した。バシネフチ株は市場価格でロスネフチが買収することでおおむね合意ができていたと指摘し、誰もが同意する価格に評価することに賄賂が支払われるのは奇妙だと語った。

 数千万ドルの賄賂がやりとりされることもあるロシアで、ウリュカエフ容疑者が受け取ったとされるのが200万ドルと比較的少額だったことは驚きと指摘する向きもある。

 60歳のウリュカエフ容疑者は2013年6月から経済発展相をつ務めた。プーチン大統領の側近ではないが、自由経済派にも属していない。

[モスクワ 15日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中