最新記事

映画

デキちゃったブリジットの幸せ探し

2016年10月28日(金)10時30分
デーナ・スティーブンズ

独身の選択肢はないのか

 ニュース番組のプロデューサーとしてキャリアを築き、「目標体重」もクリアした。それでもブリジットは停滞感と孤独に悩まされ、子持ちの友人に嫉妬している。

 そんなある日、若い同僚に野外の音楽フェスティバルに連れて行かれ、ハンサムなアメリカ人実業家(パトリック・デンプシー)と酔った勢いでセックスする。朝になって恥ずかしくなり、男の名前を聞くこともできず、こそこそとテントを出る。

 1週間後には、友人の子供の洗礼式で再びマークと鉢合わせ。離婚間近だと打ち明ける彼とホテルに飛び込み、一夜を過ごす。さて、この先の展開はご想像のとおり――。

 ブリジットはご懐妊。妊娠したことはうれしいが、子供の父親が分からない。

 ここまでがあっという間なので、リッチでハンサムな未来の夫候補Aとリッチでハンサムな未来の夫候補Bの品定めをする時間はたっぷりある。

【参考記事】『ハドソン川の奇跡』 英雄は過ちを犯したのか

 吸血鬼と狼男が延々とヒロインを奪い合うファンタジー小説『トワイライト』じゃあるまいし、優柔不断な女が心を決めるのをこれほど気長に待てる男が本当にいるだろうか。ブリジットが出産するまで、マークとジャック(デンプシー)は、かいがいしく世話を焼く。

 しかしブリジットは、なぜ2人のどちらかを夫に選ばなくてはいけないのか。シングルマザーになるという選択肢も、映画は提示している。ブリジットの母パメラ(ジェマ・ジョーンズ)はシングルマザーや同性愛者を擁護するリベラル派として、地元の選挙に立候補する。

 ヒロインがひたすら2人の男の間で揺れるストーリーは、あまりに時代錯誤に感じられる。今は自分の意思で「シングルトン」を選ぶ女性を描けるのだから、すべての女性をそう描くべき――などと言うつもりはない。世の中にはブリジットと同じように幸せな結婚生活に落ち着きたい独身男女が大勢いる。

 でも、考えてみてほしい。あなたの友人がブリジットだったら? 自分のものにならない男どもに15年も振り回された末に、妊娠した子供の父親がフェスで会った行きずりの男なのか元カレなのか分からないとしたら? とにかく結婚しろとたきつけるより、1人で育ててみたらとやんわり勧めないだろうか。親友にそう言えるなら、ラブコメだってヒロインに同じ生き方を提案していいはずだ。

<映画情報>
BRIDGET JONES'S BABY
『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』

監督/シャロン・マグワイア
主演/レニー・ゼルウィガー
   コリン・ファース
(日本公開は10月29日)

© 2016, Slate

[2016年11月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

訂正ゆうちょ銀、3月末の国債保有比率18.9%に 

ビジネス

ユーロ圏GDP、第1四半期改定は前期比+0.3% 

ワールド

EXCLUSIVE-米財務省、オーストリア大手銀に

ワールド

焦点:米の新たな対中関税、メキシコやベトナム経由で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中