最新記事

韓国

韓国腐敗防止法が生む報奨狙いの「ランパラッチ」

2016年10月7日(金)10時48分

10月4日、野心に燃えたパパラッチ2人組が、ソウルの高級街、江南地区で行われた2つの結婚式に張り込んだ。しかし、彼らは有名人を探していたわけではない。写真は隠しカメラ付きの眼鏡を見せる「公益申告総括本部」のムン・ソンオクさん。ソウルで9月撮影(2016年 ロイター/Kim Hong-Ji)

 野心に燃えたパパラッチ2人組が、ソウルの高級街、江南地区で行われた2つの結婚式に張り込んだ。しかし、彼らは有名人を探していたわけではない。標的は、韓国が施行した厳しい腐敗防止法に抵触しかねない贈り物を受け取る役人たちだ。

 食事接待や贈り物を受ける上限額を定めた同法では、公務員や国営企業社員、教師、ジャーナリストなど約400万人が直接の対象になると見込まれている。

 違反行為の通報者に対しては2億ウォン(約1845万円)以下の報奨金を与えるため、接待や贈答の根強い伝統がある韓国では、高級レストランや豪華な結婚式を狙って、カメラを振りかざし、領収書をあさる自警団活動が盛況となっている。

 結婚式に張り込んだ前述の2人を含め、こうした自警団員の一部は「公益申告総括本部」と自称する学校でスパイ術の訓練を受けている。

「金持ちと同時に愛国者にもなれる」と同校校長のムン・ソンオクさんは、隠し撮りのコツなどを教えた最近の授業で生徒に語った。

「レストランのゴミ箱の中からクレジットカードの領収書を拾うことができる。証拠を得る必要がある」。ソウル裁判所で反汚職法についての冊子を配ったムンさんは、その近くのオフィスで行った授業でそう述べた。

3-5-10のルール

 国際的な非営利組織トランスペアレンシー・インターナショナルがまとめた2015年の世界腐敗認識指数によると、韓国は経済協力開発機構(OECD)に加盟する34カ国中27位だった。

 腐敗防止法が先月28日に施行されて以来、報道によれば、ゴルフコースの予約は落ち込み、結婚式に参加するゲスト数が減少する一方、病院ではお礼の贈り物についての警告文が表示されているという。また、食事の際に、韓国ではかつてほとんど見られなかった「割り勘」をするグループも出てきている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批

ワールド

存立危機事態巡る高市首相発言、従来の政府見解維持=

ビジネス

ECBの政策「良好な状態」=オランダ・アイルランド

ビジネス

米個人所得、年末商戦前にインフレが伸びを圧迫=調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中