最新記事

北朝鮮

北朝鮮の体制崩壊目指し新たな資本主義者育てる「秘密地下ルート」

2016年10月2日(日)16時42分


ジャンマダン世代

 韓国政府の委託で作成された報告書は昨年、北朝鮮の民間事業を育成することを通じて同国の改革を促すよう提案している。政府方針ではないこの案は、韓国の大企業と提携する新興企業やパートナー企業向けの小型融資を想定している。

 しかし韓国の誰とであっても、接触を持つことは北朝鮮では死刑に処せられる可能性がある。これは1950─53年の朝鮮戦争が平和協定ではなく、休戦によって終わったため、両国が厳密には過去60年間、いまだ戦争状態にあるためだ。

 韓国政府も国民が北朝鮮と貿易を行うことを禁じている。しかし韓国に脱北した約3万人の多くが、北朝鮮に残した親族に年推計1000万ドル(約10億円)の送金を行っていることは見逃している。

 韓国統一研究院のリサーチフェロー、Hong Soon-jick氏は、脱北した投資家も、同じ送金ルートを利用できると指摘する。

「これにより市場化と情報循環を加速することができる」と同氏は語る。「しかし、政治リスクがあるため、たとえ南北関係が改善しても、こうした取引は秘密裏に行われなければならない」

 こうしたアプローチは、チラシやUSBメモリーの配布、そしてラジオ放送など、北朝鮮市民の心をつかもうと韓国の反北朝鮮団体が、これまで一般的に用いてきたやり方とは一線を画するものだ。

 同じように、米国務省もここ最近、北朝鮮の民主化を促進する計画を資金援助する提案を検討している。これは韓国在住、もしくは「ジャンマダン世代」の中で育った若い脱北者に対して、北朝鮮の若者に援助の手を差し伸べるよう促すことも目的としている。

中国の銀行

 そうした若い脱北者の1人で、ソウル在住の活動家Ji Seong-ho氏は、北朝鮮市民らが地方で食べ物の屋台や作物融資ビジネスを始めるにあたり、一度に300ドルから500ドルを送金してきた。

「市場が大きくなればなるほど、体制は弱体化する。それゆえに、北朝鮮の起業家を支援する必要がある」。中国に逃れた北朝鮮難民の亡命を支援する団体を率いる34歳のJi氏はそう語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中