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経営不振のバスケチームを人気No.1にした勝因とは?

2016年10月20日(木)18時24分
WORKSIGHT

"負け組"の意識を変えて稼げる体制を築く

 財政がひっ迫している以上、最大の課題が資金調達であることは確かなんです。それも金融機関からの借入に頼ってばかりでは経営の独立性が保てませんから、試合の観客動員を増やしてチケットやグッズの販売による営業収益を上げる、スポンサーを獲得する、寄付を募るといった施策が絶対に欠かせません。

 一方で、財政再建を果たすには組織の再建も必要です。貧すれば鈍するで、資金不足に陥ると出てくるはずの知恵も浮かばないし、モチベーションも維持できません。

 要は、当時の社員の意識は"負け組"だったわけですよ。バスケットはマイナーでお客さんが入らない、チケットも売れない、スポンサーもつかない、だから儲からないという、ないない尽くしですね。薄給で昼夜休みなく働いて、しかも人が雇えないから1人で何役もこなす、結果として何をしているかわからない、疲れる、さらに発想も乏しくなって自信も失う、成果は出ない――という悪循環です。

 そこでまずははっきりと活動理念とミッションを掲げて、自分たちが目指す道筋を明らかにすることで、資金調達に弾みをつけると同時に社内の風土改革も狙ったわけです。

 経営的には苦しかったですけど、あえてスタッフも補充しましたし、チーム体制を組んで効率よく動けるようにしたりして成果を確実に挙げていく仕組みを作っていきました。稼げる体制を築いたということですね。

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ステークホルダーの多様さにひるまず、スポンサーの獲得に注力して活路を開く


 ミッションはさまざまなステークホルダーに配慮した内容になっています。このステークホルダーの多様さこそ、再建を難しくしている1つの要因といえるでしょう。

 これは日本のスポーツクラブの運営について回る課題だと思います。ファンや選手のみならず、地域の方々、スポンサー、行政などと密接に連携していくことが望まれますからね。ともすると、どこから手を付けたらいいのか分からなくなってしまう。手をこまねいているうちに資金がなくなり、人も減らして、気が付けば崖っぷちに追いやられていたというケースは少なくありません。

 我々はまずスポンサーの獲得に着手しました。事業が軌道に乗るまでの"執行猶予期間"も設備やスタッフ、機材などへの戦略的な投資が必要です。しかし、先ほども申し上げたように金融機関からの借入は自前の収入ではありませんし、かといって営業収益を上げるには時間がかかります。大きな収入が得られて、しかも自分たちの資源として自由に使えるのは何かといえばスポンサーからの資金提供となるわけです。

【参考記事】NBAが巻き起こすビッグデータ革命

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