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イラク

モスル奪還に成功してもISISとの戦いは終わらない

2016年10月27日(木)11時00分
ジョシュア・キーティング

 ISISのイラクでの最後の日々は、同組織が台頭した頃のように破壊的で激しい戦闘を伴いそうだ。ISISは過去の戦闘では、劣勢に立たされるとその地域から潮が引くようにいなくなり、別の場所で組織を再編するだけだった。だが、モスルでは長期戦に向けて備えを固めていると思われる。

 戦闘員がモスル市内の道路に爆弾や偽装爆弾を仕掛けているとの報道もある。国連はモスルで戦闘が始まれば、避難民の数は100万人を超える恐れがあると危機感を強めている。

【参考記事】ISIS「人間の盾」より恐ろしい?イラク軍によるモスル住民への報復

 懸念すべき問題はほかにもある。これまで「打倒ISIS」の旗印の下、イラクで民族的・宗教的に対立するさまざまな勢力は一つに団結してきた。だが、中央政府の威光が隅々まで届かないこの国からISISが撤退すれば、再び各勢力が角突き合わせる事態にもなりかねない。

 さらに肝に銘じておく必要があるのは、たとえモスルで大敗してもISISが絶滅するわけではないことだ。ISISは領土支配に対する執着を捨てて、従来型のテロ組織のような地下ネットワークの構築に向けた準備を進めている。今後は中東やその他の地域でのテロ攻撃を活発化させる可能性も十分ある。

 昨年11月、オバマがISISを「封じ込めに成功した」と発表したその翌日、欧州史上最悪規模のテロがパリで発生した。モスル奪還後、次期米大統領は同じ間違いを犯してはならない。

© 2016, Slate

[2016年11月 1日号掲載]

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