最新記事

日本経済

消費低迷の裏に団塊高齢化、ミレニアル世代の消費構造も大幅変化

2016年9月30日(金)13時30分

9月30日、日本の個人消費伸び悩みの背景に、いくつかの目立った要因が浮上してきた。写真は都内で2014年9月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

 日本の個人消費伸び悩みの背景に、いくつかの目立った要因が浮上してきた。1つはこの数年間にわたって消費をけん引してきた団塊世代の高齢化。さらに深刻なのは、今後消費を担っていくより若い世代が従来型の消費を抑制している構造変化だ。スマートフォンを活用したリユース品の個人間取引や、シェアリングエコノミーなどが広がっており、新品の家具や衣料品、新車の販売不振にもつながりかねない問題を抱えている。

シニア消費に陰り

「団塊世代をはじめとするアクティブシニアが活発な消費をし、ここ3年間、ファミリーレストランの業績をけん引してきたといっても良い。しかし、中心が70歳前後となり、ライフスタイルが変わり、完全に端境期に入っている」―――。すかいらーく <3197.T>の谷真社長は、団塊世代の生活の変化がファミリーレストランの需要に影響を及ぼしていると指摘する。小売り業界がこぞって掲げた「シニアシフト」も、一時期ほどの熱はない。

 団塊世代は1947―49年生まれの約800万人。総務省の千野雅人・統計調査部長は「団塊の世代がどの年齢層にあるかで、日本経済は影響を受けてきた。高齢化に伴って、日本経済は弱くなってきた」と述べ、団塊の世代と日本経済の関連性を説明する。

 全員が65歳を超え、70歳をうかがう年齢になってきたことで、年金が収入の中心になる人が圧倒的に多くなった。総務省によると、高齢者世帯(世帯主が65歳以上である2人以上の世帯)の貯蓄現在高は1世帯あたり2430万円。しかし、これは「貯蓄額の高い一部の世帯によって引き上げられている」(千野部長)という実態があり、中央値では1547万円、最も多い世帯は100万円未満だという。収入が限られる中、貯蓄を取り崩す消費には消極的にならざるを得ない。

 高齢者世帯は、政府が消費への結び付きを狙っている給与引き上げなどの恩恵を受けられない。「団塊世代、それ以上の高齢世帯の消費支出は大きく下落するため、高齢者の消費全体に対する影響力は今後低下する」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)とみられるなか、日本は「シニア消費」に代わる消費の担い手を見付けることはできるのか――。

ミレニアル世代、消費に背伸びせず

 社会コストなどの各種負担が重く、消費の世界では存在感の薄い「団塊ジュニア」に代わって注目されているのは、2000年以降に成人・社会人となった、20―35歳のいわゆる「ミレニアル世代」。米国では、あらたな消費の担い手として位置付けられているが、日本では、この世代の消費に期待し難い状況がある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中