最新記事

中国経済

香港マーケットに予想される地殻変動 中国本土資金が大量流入

2016年9月28日(水)10時45分

 9月27日、香港株式市場は、近いうちに中国本土の投資家が取引の主役になる可能性がある。写真は人民元紙幣。台北の銀行で2010年撮影(2016年 ロイター/Nicky Loh)

 香港株式市場は、近いうちに中国本土の投資家が取引の主役になる可能性がある。そうなれば、小型株を中心に価格形成メカニズムが一変するなど地殻変動が起きる公算が大きい。

 UBSなどの予想では、香港株の取引高における中国本土資金のシェアは今の10%から3年以内に33%前後まで高まる見込み。トレーダーの間からは、今後5年で50%に達するとの声も聞かれる。現在は欧米投資家のシェアが約25%を占める。

 中国本土での規制緩和や人民元安懸念、利回り追求の動きなどが香港株への資金流入を後押しする、とファンドマネジャーは話す。そこで、ファンダメンタルズに依拠する欧米投資家と、モメンタム重視でより積極性と投機色が強い中国投資家の異なる文化が衝突を起こす恐れもある。

 とりわけ香港の中小型株にとっては、早ければ11月にも開始する深センと香港の相互接続で本土投資家が買えるようになると待望の流動性が提供される利点はあるが、同時に成長株を物色する投機の嵐に見舞われることになるだろう。

 UBSのストラテジスト、Lu Wenjie氏は「本土投資家は成長株を好む傾向があり、それらの銘柄のバリュエーションを目いっぱい高めてしまう。また5年単位の成長シナリオがわずか1週間で株価に織り込まれるケースも中国ではままある。そうした投資姿勢は香港株に多大な影響を及ぼす」と話した。

バリュエーション格差

 ゴールドマン・サックスのチーフ中国株式ストラテジスト、Kinger Lau氏によると、深センと香港の小型株のバリュエーションの差は「著しく大きい」という。

 中国本土の小型株の予想利益に基づく株価収益率(PER)は40倍強とアジア太平洋地域で最高だが、香港の小型株は4倍にとどまっている。

 こうした中で深センと香港の相互接続後は、香港株の低バリュエーションに着目した本土資金が流入すると見込まれ、先回り買いに動く中国株ファンドマネジャーも出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=

ビジネス

独VW、仏ルノーとの廉価版EV共同開発協議から撤退

ビジネス

米下院、貧困や気候問題の支出削減法案 民主党反対 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中