最新記事

人権

オーストラリアの難民虐待に学びたい?デンマークから視察団

2016年8月25日(木)20時37分
ヘンリー・ジョンソン

David Gray-REUTERS

<人権侵害で悪名高いオーストラリアの難民収容所に、デンマーク議会から視察団がやってくる。北欧もそこまで落ちたのか> (写真は今年4月、オーストラリアのシドニーでナウルとマヌスにある難民収容所の閉鎖を求めるデモ)

 オーストラリアは難民問題の解決に野蛮だが効率的な方法を編み出した。海の向こうの収容施設に収容し、怪しげな民間企業に管理を委託し、彼らが難民と認められ次第、第三国定住を強制するのだ。

 当然、内外から批判されている同制度だが、これを気に入ったようなのがデンマークだ。同議会の議員団は今週、南太平洋の小さな島国家、ナウルにあるオーストラリアの難民収容所を訪問するというまたとない機会を得た。目的はもちろん、難民申請者が押し寄せている欧州でも、オーストラリア方式がうまくいきそうかどうかを確かめることだ。

 議員団に査証が発行されたのは、英ガーディアン紙が内部資料をもとにこの収容所で横行している人権侵害、性的虐待、自傷行為が暴露した数週間後。記事によれば、警備担当者が子供の顔を張ったり、教師が生徒に性行為を迫ったり、バスの運転手が女性収容者の盗撮をしたり、弱い者ほどひどい被害に遭っている。

【参考記事】難民収容所で問われるオーストラリアの人権感覚

 難民は、難民申請をしてから結果が出るまで数カ月、ときには数年も待たされる。たいていは難民と認められるが、その場合はカンボジアに行くか小さく貧しいナウルの島に留まらなければならない。2015年、カンボジアはオーストラリアからの4000万ドルの援助と引き換えにナウルの難民を引き受けた。

【参考記事】希望のない最小の島国ナウルの全人口をオーストラリアに移住させる計画はなぜ頓挫したか

 しかしカンボジアに行ったのは5人だけで、そのうち3人は危険を覚悟で帰国した。

「オーストラリアのやり方は面白い」と、ナウルを訪問するデンマークの議員6人のうちの一人、マルティン・ヘンリクセンは言う。彼は移民排斥を主張する極右政党、デンマーク国民党に所属している。

議員団の使命

 他の政治家は、人権団体からも日常的に批判されているこのようなシステムを真似るのはどうか、と懐疑的だ。

「報道で見るナウルの人権状況は心配だ」と、議員団の一人で緑の党に所属するヨハン・シュミット・ニールセンは言う。

 4月には、パプアニューギニアの最高裁が、同国のマヌス島にあるオーストラリアの難民収容施設が違憲だとして閉鎖を命じた。

 ナウル政府は政治家もジャーナリストも収容所へのアクセスを厳しく制限しているため、収容所の実態は外からはなかなか伺い知れない。デンマーク議員団の報告に期待しよう。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱自社長、ネクスペリア問題の影響「11月半ば過ぎ

ワールド

EUが排出量削減目標で合意、COP30で提示 クレ

ビジネス

三村財務官、AI主導の株高に懸念表明

ビジネス

仏サービスPMI、10月は48.0 14カ月連続の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中