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リオ五輪

リオ五輪でプロポーズが大流行 「ロマンチック」か「女性蔑視」か

2016年8月19日(金)18時31分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

 そのやり方が実にドラマチックだった。秦選手は男子シンクロ3メートル板飛び込みで、前の週に銅メダルを獲得している。14日、何選手が銀メダルを首にかけた直後、そばに寄ってきたのが秦選手。ダイヤモンドの指輪が入った赤いケースを手にした秦選手は、何選手を抱きしめて耳元に向けて言葉をつぶやいた。「何かが起きるぞ!」会場の聴衆は二人から目を離せない。

 秦選手は何選手から体を離し、肩膝をついた状態でプロポーズの言葉を語り出す。まるで映画の一場面だ。何選手は、秦選手と向かい合って一言一言を聞きながら涙をためてゆく。

 秦選手が最後の言葉を言い終わって、赤いケースを高く掲げると、何選手はうなずいた。聴衆から歓声が上がる。指輪を箱から取って何選手の指にはめてあげる秦選手。歓声がさらに大きくなる。思わず胸が熱くなるような感動的な光景である。

 会場内の大きな歓声に包まれる二人。「なんてロマンチック!」「おめでとう!」──この場面をテレビで見ていた多く人もそう思ったに違いない。

【参考記事】リオ五輪、英国のメダルラッシュが炙りだしたエリートスポーツの光と影

 ところが、BBCが中国最大のソーシャルメディア「ウェイボー(微博)」から拾ったところによれば、「何選手が人生を変えるような、プライベートな出来事について決定をする瞬間をこのような形で公にするなんて、とんでもない大きなプレッシャーを何選手に与えたことになる」と指摘した人がいた。

「女性蔑視」?

 BBCニュースのフェイスブックのページには、このプロポーズについてたくさんのコメントが寄せられた。内容は多岐にわたったものの、複数の人が指摘したのがメディア報道は「性差別的だ」と言う点だった。

 つまり、プロポーズのくだりを大きく扱うことで、何選手が銀メダルを取ったというスポーツの功績部分が軽く扱われてしまった、というのである。プロフェッショナルな選手としての部分ではなく、女性と言う部分に焦点が当てられたことで何選手は矮小化された存在になった、と。

 ロンドンに住む英女性作家サニー・シン氏がツイートで語ったところによれば、公開の場での男性選手による女性選手へのプロポーズは男性中心主義の典型ではないか、という。BBCの取材に対し、シン氏はさらにこう説明する。

「男性中心主義の動きだと思う。ロマンチックというものではない。相手をコントロールしようという動きだ。『あなたは五輪のメダルを獲得したかもしれないけど、あるいは会社ではCEOだったり、宇宙船を作ったかもしれないけど、一番重要なのは君が私の妻であるということなんだよ』と言いたいのではないか」。

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