最新記事

リオ五輪

リオ五輪でプロポーズが大流行 「ロマンチック」か「女性蔑視」か

2016年8月19日(金)18時31分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

 シン氏は秦選手がメダル授賞式の後という時を選んだことにも批判的だ。「あんな場所で、プロポーズを拒絶するのはすごく勇気がいる。女性は誰にでも親切に、ノーと言わないようにしつけられてきたので、なおさらだ」。不当だ、つまりは女性蔑視だというわけである。

 一方、ガーディアン紙の取材に答えた、チャリティー団体「リレート」のガープリー・シン氏は別の見方をする。「相手をコントロールしようという感じではなかったと思う。普通、男女のカップルでは男性側が女性にプロポーズするものだし、今回の件が男性中心主義だったとは言えない。重要なのは当人同士が納得のいく形だったかどうかだ」。

 ソーシャルメディアの普及によって、プライベートな事柄を公にしシェアすることが日常的になった。これが五輪に限らず公開プロポーズの流行の背景にある、と同氏は続ける。

少数意見が大事な理由は

 17日午後、筆者がBBCのフェイスブックのページで「中国人選手のプロポーズはロマンチックだったか、あるいは男性側のコントロールを表していたか」という見出しがついた記事のコメントを見てみると、コメント総数は2900個に上っていた。

 とても全部は見切れないが、数十のコメントを眺めていると、「ロマンチックだった」という人もいれば、「どちらにも該当する」と言う人もいた。どちらかというと、プロポーズを肯定的にとらえている人が多い印象を持った。

 それでも、何人かに一人の割合で「あれほどプレッシャーのかかる場所でやらないほうがよかったのではないか」と言う慎重派もいた。

 筆者が見た限りでは「男性中心主義の表れ」として性差別の観点からとらえている人は少なかった。

 また、五輪プロポーズラッシュには男性同士、あるいは女性同士のカップルも含まれている現在、性差別という観点のみから公開プロポーズ問題を語ることの意味は、今後、薄まりそうだ。

 ただ、たとえ少数意見ではあっても、「女性蔑視に見える」、「男性中心主義の表れだ」、「スポーツの功績を軽んじさせる」、「イエスと言わせるように圧力が働くからフェアではない」という見方を持つ人がいることを知ることは重要だと筆者は思う。

 というのも、国内では史上二人目の女性宰相が誕生している英国だが、大企業の経営幹部の中に女性が占める割合は男性に追いついておらず、いわゆる「ガラスの天井」はまだ存在しているからだ。制度上は男女平等であり、日本と比較すれば「女性はこうあるべき(あるいは男性はこうあるべき)」という伝統的考え方が崩れているものの、「見えない・意識しにくい性差別・偏見」は存在する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東情勢を楽観 ユーロは2

ワールド

イラン核施設攻撃「中核部分破壊されず」と米情報機関

ビジネス

FRBバー理事、関税による持続的インフレを警戒 利

ビジネス

米住宅価格指数、4月は前月比‐0.4% 22年8月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 7
    イスラエル・イラン紛争はロシアの影響力凋落の第一…
  • 8
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 9
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 10
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中