最新記事

中国がいま尖閣を狙う、もう一つの理由

2016年8月10日(水)20時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国が神経をとがらせるオバマ大統領広島訪問がもたらす平和祈念式典への影響  Toru Hanai - REUTERS

 中国がいま尖閣を狙うのは南シナ海で味をしめたからだが、実はオバマ大統領の広島訪問および広島、長崎の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典と関係している。「被害者ぶるな」というメッセージを中央テレビ局CCTVは報道し続けている。

原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に対して

 実にいちいち細かいというか、何を怖がっているのかというか、オバマ大統領が伊勢志摩サミットの際に広島を訪問して以来、中国の神経質さは尋常でない。

 王毅外相はオバマ大統領の広島訪問演説に先立ち、「広島は注目に値するが、南京はもっと忘れてはならない。被害者には同情するが、加害者は永遠に責任を回避できない」と記者団に述べている。

 中国共産党の宣伝機関である中央テレビ局CCTVなどは、かつての日本軍による行為を何度も繰り返し報道し、「アメリカ大統領が被爆地を訪問したからと言って、日本の戦争責任が帳消しになるわけではない」と露骨に表明した。

 そして、オバマ大統領訪日に合わせて、沖縄で米軍基地反対の運動が行われた場面を拡大して報道し、まるで日本中が「米軍基地反対」に燃えているような印象を中国人民に与えたのである。

 今回はまた、広島と長崎の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に際して、各県の知事が「日本は加害の事実を忘れてはならない」と強調したと、CCTVはそのことだけを伝えた。

 ここまで必死になっていると、ほぼ「みっともない」という印象さえ持ってしまう。

 そもそも、建国の父、毛沢東が、日本軍と共謀して中共軍を強大化させ、そのお蔭も手伝って中華人民共和国が誕生したという事実を忘れたのか?

 いや、知っているが故にこそ、その厳然たる事実を覆い隠すために、ここまで必死に日本非難に躍起になっているとしか思えない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中