最新記事

AI

カスタマーサポートでチャットボットの普及が見込まれる理由

2016年8月8日(月)17時20分
Team Nelco(Nissho Electronics USA)

徐々に普及が期待される

 カスタマーサポートは、このようにチャットボットと相性がいいのですが、すぐに人間にとって変わることはありません。これまで述べたように、チャットボットの精度を人間との会話で全く不自由しないようにするまで高めるのはかなり大変です。このため、チャットボットが人間の書いた内容を理解できない場合や、適切な返答を見つけられない場合には、人間が代わりに返答する仕組みが採用されています。今の技術ではこれが現実です。

 カスタマーサポートに目を向けてみると、現在はオペレータの隣に人工知能がいて、人間をサポートしている段階です。これが、チャットボットが顧客と会話して、困った時にオペレータが手助けする仕組みに変わっていくでしょう。つまり、オペレータが後ろにいる状態に変わります。

 そして、徐々にオペレータが手助けする量が減っていくと考えられます。このようにして、人間の業務がチャットボットに置き換わることが予想されます。

チャットボットの開発はアメリカが早い

 これまで述べてきたように、チャットボットの中では、カスタマーサポートは早い時期に普及が見込まれるものの1つです。チャットボットを用いたカスタマーサポートの分野では、アメリカのサービスを追う必要があります。なぜなら、日本よりもアメリカの方が、カスタマーサポートが普及しやすい要因がいくつかあるからです。

理由1. 人工知能に取り組む企業が多く、エンジニアも多い

 人工知能関係のスタートアップが数多く生まれており、Google、Apple、Facebook、Microsoft、IBMなどの巨大IT企業の多くが人工知能に投資をしています。Facebookに買収されたWit.aiのように、人工知能系のスタートアップもアメリカが中心です。多くのサービスが、アメリカで生まれています。

理由2. すでにチャットでのカスタマーサポートがあり、利用者にとってハードルが低い

 実は、アメリカではチャットを用いたカスタマーサポートが一般的です。多くの企業サイトが、チャットによるカスタマーサポートを提供しています。 サイトをアクセスした際に、チャットのウィンドウが自動的に立ち上がり、カスタマーサポートとやりとりできる機能が一般的に使われています。 日本ではカスタマーサポートをテキストで行う事例や、文化が少ないため、顧客がチャットを使ってカスタマーサポートを受けることに対して抵抗を持つ可能性があります。

real-chat.png

zopimは、ウェブサイト用のチャットウィンドウのシステムを提供する

理由3. 日本語よりも英語は人工知能の開発が速い

 人工知能の開発は、日本語よりも英語の方が進んでいます。英語圏で人工知能の開発が進んでいることももちろんですが、日本語は単語の間に区切りがなく、文法も柔軟という特徴もあり、英語よりも解析が難しいのです。

 また、人工知能の開発には、学習用に多くのデータが必要になりますが、世界中のWebサイトの半数以上が英語のサイトという調査結果もあるように、英語のテキストのデータが圧倒的に豊富です。IBMの人工知能、Watsonの自然言語処理機能も、英語で提供されていたサービスが、何年も後になってから日本語にも対応しました。

チャットボットはシリコンバレーのサービス研究が重要

 ご存知のように、多くのサービスがシリコンバレーを中心としたアメリカで先に普及しています。シリコンバレーには多くのテクノロジー企業、スタートアップが集結していることが大きな理由です。さらに、上で述べたようにチャットボットの場合は、英語と日本語という言語の違い、テキストでのカスタマーサポートに対する文化の違いもあり、他の分野に比べてシリコンバレーのサービスが日本のサービスに先行する例が多くなるでしょう。チャットボットではシリコンバレーのサービス研究がより重要となります。

※当記事は「 ※当記事は「Nissho Electronics USA」からの転載記事です。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

TSMC、熊本県第2工場計画先延ばしへ 米関税対応

ワールド

印当局、米ジェーン・ストリートの市場参加禁止 相場

ワールド

ロシアがウクライナで化学兵器使用を拡大、独情報機関

ビジネス

ドイツ鉱工業受注、5月は前月比-1.4% 反動で予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中