最新記事

テクノロジー

テレビ会議なんていらない!

2016年8月8日(月)15時30分
L・V・アンダーソン(スレート誌編集者)

 自分の見た目以外にも、テレビ会議中は気を取られるものがやたらとある。コンピューター画面に向かっていれば、ついメールを読んだり同僚にメッセージを送ったり、サイトをあれこれ見たりしてしまう。

会話のタイムラグも問題

 それでもテレビ電話では普通の電話より実りある会話ができるというなら、こうした欠点も我慢できるだろう。だが、現実にはそうではない。

 支持派に言わせれば、テレビ会議では同僚の表情やボディーランゲージを見て、それに反応することができる。しかし、画面越しの意識的でぎこちない表情やしぐさでは真意はほとんど伝わらず、悪い印象が強くなる。

 ある研究では就職の模擬面接で、テレビ電話を用いた場合と対面で行った場合を比較した。それによると、テレビ電話での面接では、面接者と被面接者の双方が相手により低い評価を下したという。

【参考記事】私がポケモンGO中毒になるまで

 こうした傾向に拍車を掛けるのが技術的問題だ。テレビ電話での会話に1・2秒間のタイムラグを設けた研究では、時間のずれがない場合より、会話の相手を「集中力や親しみやすさ、自制心に欠ける」と感じる結果が出た。

 対面での会議には人間関係を育む要素が存在するが、それもテレビ会議では消えうせる。会議室に集まるときは、自然に目を合わせたりほほ笑み合ったり、会議が始まる前に世間話をしたりするもの。その一方で筆者の体験では、テレビ会議の前は誰もが黙って無表情で座り、コンピューター画面上の別のウインドーを見詰めている。

 2次元版の同僚や部下の顔を見て会議をする必要が本当にあるのか、真剣に考えてみてほしい。きちんとコミュニケーションを取り、絆を深めたいなら対面での会議が一番だ。

 対面で話をしたくてもできないときは? それなら個人的には、テレビ電話ではなく昔ながらの電話を使いたい。別の場所にいる人と会話するときは、自分や相手の見た目より話の内容に集中したいから。

© 2016, Slate

[2016年7月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ

ビジネス

アングル:中国のロボタクシー企業、こぞって中東に進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 10
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中