最新記事

ゲーム

私がポケモンGO中毒になるまで

2016年7月29日(金)16時40分
チェルシー・ハスラー(スレート誌ライター)

Volkan Furuncu-Anadolu Agency/GETTY IMAGES

<世界各国で社会現象となった「ポケモンGO」はファミコンで育った世代のノスタルジアをかき立てる。ゲームボーイをスマホに替えてモンスターをゲットしろ!>

 ポケモンGOが人々を魅了するパワーを、私は素直に認めたくなかった。

 私は任天堂と共に育った世代だ。『ゼルダの伝説』や『ゴールデンアイ007』などのゲームに熱中し、10代前半はゲームボーイを手放さなかった(ポケットモンスターの赤バージョンと緑バージョンのソフトを取っ替え引っ替えした)。

 でも、ポケモンの新しいゲームが登場して、スマートフォンを握り締めた大人がゾンビの集団よろしくナッシーを追い掛けているらしいと知っても、自分には関係のないことだと言い聞かせていた――はずなのに。

 ポケモンGOの魔の手に落ちた瞬間のことは、はっきり覚えている。7月7日木曜日の夜。雨が降っていた。ブルックリンのグリーンポイント・アベニュー駅で地下鉄を降りた私は傘がなく、軒下でiPhoneを手に時間を持て余していた。

 そういうときが危険なのだ。気が付くと、私はアップストアにアクセスしていた。

【参考記事】ポケモンGOは「スパイ目的」と、モスクワ市が代わりのゲームを提供

 大急ぎで登録して(慌て過ぎて、プレーヤー名として表示されるニックネームにおかしな名前を付けてしまった)、設定のページに進み、ようやく音声を消すことができた。信じられないくらい大きな音が出ていたから、背後の雑貨店にいた男性には聞こえていたに違いない。

 続けて画面上のボタンを片っ端から押し、モンスターボール(これを投げてポケモンを捕獲する)をかなり無駄にして、ゲームのやり方を確認した。そして、私は魔法に掛けられた。

恋人を置き去りにして

 その夜のうちに、たくさんポケモンを捕まえた。自宅のテーブルでは、ケールの蒸し煮の上でビードルがジャンプしていた。

 友人たちと行ったバーにはドードーが隠れていた。店の裏口を出ると、暗闇の中にスマホを持った人たちとケンタロスがいた。私は時々「新鮮な空気を吸いに」店を出た。辺りを歩いてポケモンを探す、という意味だ。

 とはいえ、この手のアプリは、ほろ酔い気分のときに楽しいだけ。アプリを閉じて一晩寝たらおしまい――のはずだった。

 そして翌日、私は完全にはまっていた。

 最初に忠告しておこう。大切な友人やパートナーと一緒にプレーしないほうが無難だ。結局は競い合うことになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

男が焼身自殺か、トランプ氏公判のNY裁判所前

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中