最新記事

ゲーム

私がポケモンGO中毒になるまで

2016年7月29日(金)16時40分
チェルシー・ハスラー(スレート誌ライター)

magt160729-02.jpg

Volkan Furuncu-Anadolu Agency/GETTY IMAGES

 友人たちとの食事に向かう途中、私は彼氏を置き去りにして駆け出し、カイロスとプリンを捕まえた。彼はゆっくり歩きながら、ポケモンを自分に引き寄せていた。彼の中毒症状はかなり進行していた。

 食事を終えると、私たちはポケモン追跡を再開したくてうずうずしていた。グリーンポイント・アベニュー駅の近くをうろうろして、ポケモンが増えるたびに大喜びした。

 バーに入ったら、店内にいる全員がポケモンを探していた。バーテンダーにイシツブテを捕まえられる裏通りを教えて、ビールを1杯おごってもらった。店の裏手はスマホの画面の光であふれ、「捕まえた!」「これ何?」と声が上がっていた。

 帰宅すると、私のアパートメントの周辺がポケストップ(モンスターボールなどのアイテムが手に入る場所)だらけになっているではないか。ポケストップの近くで有料アイテムの「ルアーモジュール」を使えば、ポケモンが30分間うじゃうじゃ出てくる。もちろん、私たちはそのモジュールを購入した。

 その瞬間、私は自分がポケモンGO中毒になっていることを確信した。

【参考記事】ポケモンGOは大丈夫? 歩きスマホをやめたくなる5つの裁判例

 私だけではなかった。土曜日も日曜日も、大勢の人が通りをうろうろしていた。教会の前には一心不乱に画面をタップする集団。ウオーターフロントの公園も、ポケモンを捕まえようとスマホを見詰めている人々でごった返していた。川向こうの美しい都市の景観などには目もくれずに。

まるで催眠術のように

 日曜日の夜になり、私と私の彼のポケモン熱もようやく冷めたかに思えた。私たちはその週の予定を話し合った。火曜日の夜はステーキを食べに行こうか。金曜日はコンサートだから、アルバムを聴いて予習を始めよう。私たちは普通の生活を取り戻しつつあった。

 ただし、ポケモンGOは、まさに私のような人間を魅了するべく設計されている。思春期前をポケモン漬けで過ごした懐かしさと記憶を呼び覚ましつつ、ちょっとしたひねりを加えて、まるで催眠術のように未来的な新しさを感じさせる。

 私はポケモンのレベルアップについておさらいできるサイト(昔よく見ていた)をブックマークしてから、スマホをロックして、ベッド脇のテーブルに置いた。彼氏の顔は、まだスマホの光に照らされていた。

© 2016, Slate

[2016年8月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中